ありふれた氏又は名称

「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、商標法第3条第1項第4号に該当して商標登録を受けることができません。今回は、無効審判で有効審決が出され、審決取消訴訟でも有効と判断された事例を紹介します(令和7年(行ケ)第10072号 審決取消請求事件)。全国的にありふれた姓氏や名称であれば商標法第3条第1項第4号に該当しますが、「青葉」という文字は、姓氏として、また医業の指定役務との関係においてありふれていないと判断されています。

(要旨)本件商標は、「あおば皮フ科クリニック」の文字を標準文字で表してなるものである。本件商標の指定役務は第44類「医業」であり、本件商標の指定役務の需要者は、医業による治療を受けており又はこれを受ける可能性のある一般の消費者であると認められる。本件商標の構成中の「あおば」の文字部分に関し、広辞苑第七版には「あおば」に対応する語として、「青葉」のほか「青羽(青翅)」の語が掲載されているが(広辞苑第七版その他の辞書における用語の掲載及び用語の意味等の記載に関する本件審決の事実認定に不当な点は認められず、当事者もこの点に関する本件審決の事実認定を争っていないから、辞書における用語の掲載及び用語の意味等の記載に関しては、本件審決の認定に従う。以下同じ。)、「青羽(青翅)」の語は一般にはほとんど馴染みがないことから、本件商標の指定役務の需要者は、本件商標の構成中の「あおば」の文字は「青葉」を表したものと理解するといえる。「青葉」の文字は、「緑色の、若葉、新緑」などの意味を有する語であるが(広辞苑第七版)、このような辞書上の意味合いのほか、姓氏(名字)として使用される場合があり(乙1)、また、地名又は地名の一部に使用される場合がある。しかし、本件商標の構成中の平仮名の「あおば」の文字をもって、これが上記のいずれの意味合いで使用されているのか、明らかであるとはいえない。また、「青葉」の姓氏は、全国順位が5492位、全国人数が1800人程度にすぎず(乙1。乙1は「名字由来 net」というインターネット上の記事を印刷した書面であり、乙1に係る証拠説明書の記載、及び乙1と同じく「名字由来 net」の記事を印刷した書面である乙2の記載内容に照らし、乙1は令和6年10月にインターネット上での検索及び印刷がされたものと認められる。)、「青葉」がありふれた姓氏であるとはいえないから、本件商標の構成中の「あおば」が姓氏として用いられているとしても、それはありふれたものとは認められない。さらに、「青葉」という地名又は「青葉」の語がその一部として使用されている地名が全国的に存在することは、原告が訴状において主張するとおりであるものの、「青葉」が特定の場所の地理的名称として著名なものであるとは認められないから、本件商標の構成中の「あおば」が地名として用いられているとしても、それは著名な地理的名称ではなく、ありふれた名称に当たらない。全国の病院、診療所、薬局(甲1)、法人(会社を除く。)(甲3)には、「あおば」又は「青葉」の名称を含むものがあるところ、そのうち、それらの施設等の所在地の地名に「青葉」が含まれるもの、開設者等の姓氏が「青葉」であるもの以外は、「あおば」又は「青葉」の名称が、「緑色の、若葉、新緑」などの辞書上の意味合いで用いられていると解する余地があり、そのような施設等は複数存在することが認められる。しかし、全国に存在する同種の施設(病院、診療所、薬局、法人(会社を除く。))の数に比して、そのような施設等の数の比率は少ないものと認められ(乙3によれば、歯科診療所及び薬局を除く医療施設だけでもその数は全国で11万を超えることが認められる。)、「あおば」との名称は、上記の辞書上の意味合いで用いられているとしても、ありふれた名称であるとは認められない。そうすると、本件商標の構成中の「あおば」は、ありふれた氏又は名称とは認められない。

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