もれ防止用シール材事件(特許)

被告製品(プリンタ用シール材)について、特許請求の範囲に記載の「径」を認識することができず、製品に組み込まれた「使用状態」について被告がどのように関与しているかの証拠がないとして、非侵害と認定され、無効論は判断されませんでした(令和4年(ワ)第9112号 損害賠償請求事件(甲事件) 令和4年(ワ)第11173号 損害賠償請求事件(乙事件))。

特許請求の範囲には、競合他社の製品のみが含まれるように記載すること、大小を比較するときにある程度一定の大きさである部位を用いること、の重要性を改めて痛感する事件です。

(判決要旨)

構成要件1C:カットパイル織物は、地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており、経糸と緯糸の径が同じ、もしくは経糸と緯糸が異なる径を用いてパイル織りされた織物であり、

『甲19号証の1・2に示された測定手段は、画像の作成過程、画像解析の双方において、測定の正確性、合理性が担保されたものとはいえないというべきである。また、画像解析の結果報告される糸の断面(空隙を含む外郭)は、不定形で円又はそれに近い形状を備えておらず、かかる画像から、「径」を認識することも困難である。そうすると、甲19号証の1・2によって、被告製品について構成要件1Cの充足が立証されたということはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。』

構成要件1E: 使用状態では、回転体の回転方向に対し、該配列の方向が該予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように、該配列の方向を該回転方向に対して傾斜させることを特徴とする(画像形成装置における微細粉粒体のもれ防止用シール材)。

『原告は、構成要件1Eの「使用状態」につき、変遷を経て、「微細粉粒体もれ防止用シール材がトナーカートリッジに設置されて現像ローラもしくは感光ドラムが回転している状態」と特定した。前提事実によると、被告らは、被告製品を製造し、キヤノンないしその関連会社に販売する行為をするにとどまっている。 そして、キヤノンないしその関連会社が製造するトナーカートリッジに被告製品がどのように設置されるかについて被告らが関与していること、より具体的には、構成要件1Eの回転方向に対する角度φと配列方向に対する角度θの関係を踏まえてカートリッジに設置する行為を被告らがしていることを認めるに足りる証拠はない。』

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