オールエレメントルール

特許侵害訴訟において、他人の製品や方法がクレームのすべての要件を備えている場合にのみ、特許侵害が成立するというオールエレメントルールが採用されます。今回は、構成要件Fの充足性(「前記一定期間分の前記車両情報をまとめて、予め定められた単位時間に圧縮した圧縮車両情報に演算する演算手段」を備えるか)及び同Gの充足性(「前記一定期間後、前記圧縮車両情報をカーナビゲーションヘ送信する情報送信手段」を備えるか)について争われた、映像視聴装置の侵害訴訟事件を紹介します(令和5年(ワ)第10970号 特許権侵害行為差止等請求反訴事件(甲事件)、令和5年(ワ)第11539号 損害賠償等請求事件(乙事件))。

(要旨)a 構成要件Fにおける「圧縮」の語義は、「物質に圧力を加えてその容積を小さくすること、おしちぢめること」等である(弁論の全趣旨)。また、本件明細書の記載(前記(ア)b)によれば、本件発明において、車両から送信される車両情報をいったん受け取り、「演算手段」が、カーナビゲーションに一定期間送信せず記憶された車両情報(前記一定期間分の前記車両情報)をまとめて、予め定められた単位時間に圧縮した圧縮車両情報に演算し、前記一定期間後、「情報送信手段」が前記圧縮車両情報をカーナビゲーションヘ送信するというのであるから、「圧縮」とは一定期間分の車両情報を単位時間におしちぢめること、すなわち、時間的に短縮するとの趣旨で用いられているものと当業者には理解される。そうすると、構成要件F及びGの「圧縮」を備えるというには、T1期間分(又は「T2期間+T1期間」分)の車両走行情報が存在する場合に、これらの期間よりも短いT2期間に収まるように車両走行情報を時間的に短縮する(おしちぢめる)ことが必要であると解される。
b 被告製品についてみると、車両から被告製品に入力された車速信号のうちT1期間の最後の3パルスを利用して、演算により生成された車速信号(「T2期間+T1期間」分の車両走行情報に相当するもの)をT2期間においてカーナビに送信(出力)するものである(前記前提事実(4)ア(イ))。これは、T1期間の最後の3パルスから、その直後のT2期間及びT1期間における走行状態を予測した上で生成された「T2期間+T1期間」分の情報量を有する車両走行情報を、当該T2期間においてカーナビに送信するものと認められる。このように、T2期間においてカーナビに送信するのが「T2期間+T1期間」分の車両走行情報に相当するものであるとしても、当該情報はT1期間分(又は「T1期間+T2期間」分)の車両走行情報を時間的に短縮する(おしちぢめる)処理が行われたものとは解されない

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