クレーム用語の解釈
特許侵害訴訟におけるクレーム解釈にあたっては、広辞苑などの一般的な用語解釈と明細書の記載から厳密に判断されます。今回は、「圧着」という用語の解釈が争点の1つとなった事件を紹介します(令和5年(ワ)第70594号 特許権侵害差止請求事件)。
(要旨)本件発明においては、マットレスカバーが複数のクッション体を圧着させながら嵌め込み可能である有底筒状のカバー部材を有するものとされ(構成要件G)、複数のクッション体は、圧着した状態で前記マットレスカバーに組
入れられているものとされている(構成要件H)。そして、「圧着」は「強く圧迫してくっつけること」という意味を有するが(広辞苑第七版。乙1)「圧」が「おさえる。おしつけて動けなくする」を意味する(広辞苑第七版付録。甲15)ことからすると、「圧着」には「押さえてくっつく」といった程度の意味があるともいえる。次に、本件明細書をみると、…本件発明における「圧着」とは、クッション体同士に隙間が生じない程度に相互に何らかの圧力がかかる状態であることをいうものと解するのが相当である。
被告各製品は、「中材が、圧着した状態でアウターカバーに組入れられているマットレス」であるといえるから、構成h(「前記の中材は、圧着した状態で前記アウターカバーに組入れられているマットレス。 )を有し、」 「中材」は「クッション体」に、「アウターカバー」は「マットレスカバー」に相当するから、構成要件Hを充足する。そして、組入れた際に圧着した状態にあるのであるから、組入れ時にも圧着した状態であったと推認できるので、被告各製品は、「アウターカバー」の「有底筒状のカバー部材」に、「複数の中材を圧着させながら嵌め込み可能」となっていると認めるのが相当である。その余の点において被告各製品が構成gを有することについては争いがないから、被告各製品は構成g(「前記アウターカバーは、前記のように裏面カバー上部と側面カバーの下部に設けられたファスナーで結合されることで有底筒状のカバー部材が構成され、これに、前記複数の中材を圧着させながら嵌め込むことが可能となっており、 )」を有し、前記のとおり「アウターカバー」は「マットレスカバー」に、「中材」は「クッション体」に相当するから、構成要件Gを充足する。