サポート要件
特許法第36条第6項第11号には、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」という規定があり、いわゆるサポート要件と言われています。このサポート要件を満足するためには、特許請求の範囲の記載が本願発明の課題を解決できることが必要となります。
今回は、主にサポート要件違反が争われた事件を紹介します(令和 5年 (行ケ) 10121号 審決取消請求事件)。小型化の課題を解決する場合に、第1軸と第2軸とが直交している必要はなく、特許請求の範囲に基づいて課題が解決できると認定されました。
(要旨)請求項1では、「前記ヒンジユニットは、前記ディスプレイの直交する二辺のうち一辺に沿って延びる第1軸上の一対の第1ヒンジによって 前記第1軸まわりに回動可能に前記本体に連結された支持部」 「前記ディスプレイは、前記ディスプレイの直交する二辺のうち他辺に沿って延びる第2軸上の一対の第2ヒンジによって前記第2軸まわりに回動可能に前記支持部 に支持されており」と記載されているのであり、これらの「直交する」は、「ディスプレイの」「二辺」の位置関係に言及していることが明白であり、 原告が主張するように、第1軸(軸A)と第2軸(軸B)の関係を示すものではない。また、上記記載では、「辺に沿って延びる」ものとして第1軸と 第2軸の位置関係を定めているのであるから、これらの軸は辺と同じ位置に存在することを要せず、辺と近い距離を保って離れない位置とすることも可能である。そうすると、上記の第1軸と第2軸は、必ずしも直交する位置にあることを意味するものとはいえない。したがって、請求項1において、第1軸(軸A)と第2軸(軸B)が直交している構成を特許請求しているとはいえない。
本件発明は、例えば請求項1において「一対の第1ヒンジの一方は前記一対の第2ヒンジの間に配置されている」との構成を採用することにより (請求項6でも同様の構成を採用している)、一対の第1ヒンジからなる軸が第2ヒンジの内側に隠れるため、ヒンジユニットが小型化し、ディスプレイが同じサイズであるとすれば、従来技術の第1ヒンジ間に形成される直方体の空間の分だけ撮像装置を小型化できることは明らかである。