デザインの著作物
デザインは、制作者の個性が表れたものであって「思想又は感情を創作的に表現したもの」、かつ、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と認められれば、「著作物」に該当します。今回は、デザイン著作物の複製権を侵害したとした事例を紹介します(令和 5年 (ワ) 70582号 著作権侵害(不法行為)による損害賠償請求事件)。
(要旨)左上に「2021スタート」と、左下に「岐阜県関ケ原町公式HP」と記載されているのに対し、被告関ケ原町が制作したポスターでは、左上に「2021.4月本番」と、左下に「関ケ原検定実行委員会」と記載され、
かつ、同委員会の住所、電話番号及びURLが記載されている点、被告関ケ原町が制作した実施要領では、その下部に問合せ先及び関ケ原検定の申込用紙に係る記載があるのに対し、本件実施要領にはその記載がない点等が相違しているものの、それ以外の部分は同一であることが認められる。
上記の相違点に係る変更等は、その態様からすると、主に形式的な内容調整のために行われたものといえ、新たに思想又は感情を創作的に表現するものであるとは認められない。
したがって、被告関ケ原町が被告ポスター等を制作する行為(本件制作行為)は、本件ポスター等に依拠して、これと同一のものを作成する行為であるか、又は具体的表現に修正、増減、変更等を加えても、新たに思想又は感情を創作的に表現することなく、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得できるものを作成する行為というべきである。
以上によれば、本件制作行為は、本件ポスター等に係る原告の著作権(複製権)を侵害するものと認められる。
本件ポスター等が関ケ原検定の実施に際して制作されたものであるから、被告関ケ原町においてそれを自由に利用できることが前提となっていたことを指摘する。しかしながら、関ケ原検定において本件ポスター等を自由に利用できることが前提になっていたという事実が認められるとしても、その事実をもって、原告が本件制作行為を許諾していたことが直ちに根拠付けられるものではない。
そして、前提事実(4)アのとおり、原告が、令和3年6月17日、被告Bⅰ及び被告Cⅰに対し、関ケ原検定の実施に際して原告の著作権及び商標権を侵害した事実が存在する旨を記載した「知的財産侵害警告」と題する文書を送付しており、本件制作行為に対する抗議を行っていることを踏まえると、本件全証拠によっても、被告らの主張する利用許諾の事実を認めることはできないというべきである。