フリー素材
SNSやホームページの背景画像やアイコンなどにフリー素材を活用することが多いと思います。今回はフリー素材と誤信して掲載した行為が過失に当たるとして、著作権侵害の不法行為が認められて事件を紹介します(令和6年(ワ)第5501号 損害賠償請求事件)。本件では、使用者責任も認定されていますので、フリー素材であることをしっかり確認してから使用することの重要性を改めて認識させられます。
(要旨)弁論の全趣旨によれば、本件支配人又は本件従業員は、本件イラストがいわゆるフリー素材(無料イラスト)であるものと誤信して本件掲載行為に及んだと認められるから、かかる行為は、過失により本件イラストに係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害したものとして、不法行為(民法709条)となる。
被告が、本件支配人等との関係で「ある事業のために他人を使用する者」(民法715条1項本文)といえるためには、被告が事実上の指揮監督の下に本件支配人等を仕事に従事させていたことが必要と解される。そこで検討するに、本件業務委託契約においては、本件支配人は、本件業務委託契約の趣旨に従い、善良な管理者の注意をもって、支配人業務を行うこと(4条1項) 被告が定めた各種マニュアルに従って支配人業務を行い、スーパーホテルチェーン全体として顧客に対して同一種類・水準のサービスを提供するよう努めること(4条2項) ホテルの運営上において、 不明及び不確かな事項が発生した時は必ず被告に連絡をして相談の上で支配人業務を行うこと(4条7項)等の一般的な業務委託に関する定めのほか、被告の事前の書面による承諾なくして、本件ホテル店舗名による第三者との契約、SNS等を利用したサイトへの投稿行為、サイト運営を主催する行為、被告の会社名を不特定又は多数の人の認識し得る状態に置く行為等をしてはならないこと(13条9号)が定められていた(乙10)。このように、本件支配人は、被告が経営するホテルの経営方針の枠内で、本件ホテルの支配人業務を行うことが課せられており、SNS等を利用したサイトへの投稿行為についても、被告の事前許可制であったというのであるから、その裁量の範囲は非常に狭く、本件支配人は、被告の事実上の指揮監督の下、本件掲載行為を含む本件ホテルの支配人業務に当たっていたものと認められる(なお、本件掲載行為を実際に行ったのが本件従業員であっても、本件掲載行為については、本件支配人において被告の事前許可を得る必要があったと解されることからすれば、実質的には本件支配人の行為と評価できる。)