プロバイダ責任制限法「開示を受ける正当な理由」

インターネットで公開した発信者情報について開示を請求できる場合の条件として、「当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。」(プロバイダ責任制限法5条1項1号)、「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)というものがあります。このプロバイダ責任制限法5条1項2号が争点の一つとして、発信者情報の開示が認められた事件を紹介します(令和 6年 (ワ) 70271号 発信者情報開示命令の申立てについての決定に対する異議の訴え)。

(要旨)弁論の全趣旨によれば、被告は、本件各氏名不詳者に対し、本件動画に係る被告の著作権が侵害されたことを理由として、不法行為に基づく損害賠償請求をする予定であるものと認められ、その請求のためには、原告が保有する本件各発信者情報の開示を受ける必要があるといえる。

これに対し、原告は、被告は本件各氏名不詳者の故意又は過失を基礎づける事実について、何ら立証していないから、本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」とはいえないと主張する。しかしながら、プロバイダ責任制限法5条1項1号は、違法な権利侵害であることの明白性までは要求しているものの、故意又は過失を要件として規定していないこと、発信者が特定されていない段階で被告が発信者の主観的要件である故意又は過失の存在を主張立証するのは酷であるといえることからすると、発信者情報の開示を求める段階で、被告において発信者の故意又は過失を立証する必要まではないと解するのが相当である。そうすると、本件各氏名不詳者に著作権侵害に関する故意又は過失があった否か不明であることは、本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」ことを否定する事情とはいえないから、原告の上記の主張は採用できないというべきである。

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