ロゴ商標の類否判断NO2
以前、令和6年(ネ)第10027号 商標権侵害差止等請求控訴事件において非類似と判断された事例を紹介しましたが、同じ商標を用いて非侵害(非類似)と判断された別の事件を紹介します(令和6年(ワ)第70635号 商標権侵害差止請求事件)。
(要旨)原告商標と被告標章1の外観は、外側及び内側に四角形が配置されている点、外縁部分及び内側の図形が淡色で、その余の部分が黒色であるという点において共通する。これらの共通点は、取引者及び需要者が着目する図形の全体的構成に関わるものであるから、取引者及び需要者に対し、一定程度、類似との印象を与え得るものといえる。一方、原告商標と被告標章1の外観は、①外側及び内側の四角形の四辺に当たる縁(辺)が、外側に向けて湾曲しているか(原告商標)、直線であるか(被告標章1)の点、②外側及び内側の四角形の四隅が丸みを帯びているか(原告商標)、角であるか(被告標章1)の点、③外縁部分の幅が、原告商標の方が被告標章1より狭い点、④中央部分に配置された図形が異なる点において相違する。上記④の相違点は、取引者及び需要者が着目する中央部分に位置する図形に関わるもので、識別力が高い部分に係る相違点である。また、上記①及び②の相違点についても、外縁部分から受ける印象が丸みを帯びたソフトなものであるのか、シャープなものであるのかにおいて明らかに異なるから、上記④の相違点とあいまって、上記の共通点から全体として受ける類似との印象を凌駕することは明らかである。そうすると、原告商標と被告標章1の外観は、取引者及び需要者に異なる印象を与えるものといえ、類似するとはいえない。
(離隔的観察)『外側及び内側の各四角形状部分において、原告商標の縁 (辺)は緩やかな曲線、角はややなだらかな曲線であり、全体的に曲線で構 成されるのに対し、被告標章は角のみが丸められた直線状の縁(辺)で構成 されることに加え、被告標章は、原告商標にはない四角形状部分の立体的な 装飾(相違点③)、中央に位置する幅広の十字部分につながる細い支持棒 (相違点⑥)が存在し、さらに外側の四角形と内側の四角形との間の部分の幅が原告商標より広いこととあいまって、原告商標がシンプルな印象を与え るのに対し、重厚で複雑な印象を与えるといえる。さらに、被告標章の色彩は、外側の四角形と内側の四角形との間の部分と 十字部分が金属的な光沢の銀色、その間の十字以外の部分が赤色で(相違点 ④、⑦、⑧)、それぞれが白色、黒色である原告商標の色彩とは全体として15 明らかに異なる上、被告標章はそれぞれの色が目立つとともにコントラスト をなしており、前記の形状の相違を強調する効果も有しているといえる。』
