公序良俗違反ではない商標出願
日本の商標出願は先願主義であるため、商標出願を勝手にされたといって拒絶査定にすることは簡単ではありません。ですので、事業を進める上で大切なネーミングは、なるべく速やかに商標出願することをお勧めします。
「天眞正自源流」の文字を標準文字として、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,インターネットを利用して行う映像の提供,演芸の上演,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),運動施設の提供」を指定役務とした商標出願が、当該総合武術とは無関係の本件商標の商標権者が剽窃的に出願したと主張しましたが、公序良俗違反とはなりませんでした。
(先願主義と公序良俗違反との関係)
先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨などからすれば、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段に事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである。出願人と、本来商標登録を受けるべきと主張する者との関係を検討して、例えば、本来商標登録を受けるべきであると主張する者が、自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず、出願を怠っていたような場合や、契約等によって他者からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず、適切な措置を怠っていたような場合は、出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで、「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当ではないと判示されている(参考:知的財産高等裁判所 平成19年(行ケ)第10391号 平成20年6月26日判決)