分離観察
本願商標が結合商標であって、引用商標の一部を含んでいる場合、本願商標が分離観察できるか否かが争点となります。今回は、「Discover Japan 」には出所識別機能が一定程度あり、「TRAVEL」には出所識別機能としての称呼・観念が生じないとして分離観察されて拒絶が維持された事例を紹介します(令和7年(行ケ)第10086号 審決取消請求事件)。
(分離観察判例)商標は、その構成部分全体によって他人の商標と識別されるものであるから、複数の構成部分を組み合わせた結合商標について、その構成部分の一部を抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは原則として許されないというべきであるが、実際の取引において、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標については、常に必ずしも構成部分全体によって称呼、観念されるわけではなく、その一部のみによって称呼、観念されることがあることを踏まえると、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、その構成部分の一部を要部として抽出し、その部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されると解するのが相当である(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成5年9月10日第二小法廷判決・民集5 47巻7号5009頁、最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
(要旨)本願商標は「Discover Japan TRAVEL」の欧文字を標準文字で表してなり、「Discover」と、「Japan」と、「TRAVEL」の各文字部分とで構成される結合商標であり、その構成中、「Discover」の文字部分は「発見する」の、「Japan」の文字部分は「日本」の、「TRAVEL」の文字部分は「旅行する」又は「旅行」の意味をそれぞれ有する、平易な英単語である(甲9、乙2~4)。 また、本願商標を構成する各語の間には空白が設けられているところ、その構成中、「Discover」及び「Japan」の各文字部分は、いずれも語頭のみ大文字で、それ以外は小文字で表してなるものであるのに対し、「TRAVEL」の文字部分は、全て大文字で表してなるものであって、そうすると、「Discover Japan」と「TRAVEL」は、外観上、分離して認識、観察されるものといえる。そして、証拠(乙5~39)及び弁論の全趣旨によれば、旅行に関する役務においては、「TRAVEL」、「トラベル」等の語が、その役務の内容を表すものとして一般に用いられていることが認められ、このような取引の実情を踏まえると、本願商標の構成中、「DiscoverJapan」の文字部分からは、「ディスカバージャパン」の称呼が生ずるとともに、「日本を発見する」又は「日本を発見しよう」との観念が生じ、旅行に関する役務との関係において、役務の出所識別機能を一定程度果すものといえるのに対し、本願商標の構成中、「TRAVEL」の文字部分については、役務の内容を表すものとして一般に用いられる、「トラベル」の称呼と、「旅行する」又は「旅行」との観念が生ずるにとどまり、これを超えて、出所識別標識としての称呼、観念が生ずるものではないというべきである。本願商標が、実際の取引において、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められず、本願商標については、その構成中、「Discover Japan」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを引用商標である「DISCOVER JAPAN」と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。

