医薬分野の用途発明

既知の物質の新規な用途を見出したときは、用途発明として保護を図ることができます。特に、医薬分野での用途発明では、引用文献に開示された対象物質が対象用途において実施可能性を認識できなければ、進歩性が認められやすいものとなっています。無効審判請求により特許有効審決が出され、その審決取消訴訟でも特許有効と判決された抗パーキンソン病薬の事例を紹介します(令和 5年 (行ケ) 10093号 審決取消請求事件)。

(要旨)特に医薬の分野においては、機械等の技術分野と異なり、構成 (化学式等をもって特定された化学物質)から作用・効果を予測すること は困難なことが多く、対象疾患に対する有効性を明らかにするための動物 実験や臨床試験を行ったり、あるいは、化学物質が有している特定の作用機序が対象疾患に対する有効性と密接に関連することを理解できる実験を行うなど、時間も費用も掛かるプロセスを経て、実施可能性を検証して、初 めて用途発明として完成するのが通常である。このこととの平仄から考え ても、引用発明が用途発明と認められるためには、単に、引用発明に係る物質(薬剤)が、対象とする用途に使用できる可能性があるとか、有効性を期待できるとか、予備的な試験で参考程度のデータながら有望な結果が得られているといったレベルでは足りず、当該物質(薬剤)が対象用途に有用なものであることを信頼するに足るデータによる裏付けをもって開示されているなど、当業者において、対象用途における実施可能性を理解、認識できるものでなければならないというべきである。このように解さないと、上記のようなプロセスを経て完成された実施可能性のある医薬用途発明が、実施可能性を認め難い引用発明によって、簡単に新規性、進歩性を否定されることになりかねず、その結果は不当と考えざるを得ない。

L-ドーパの補助薬として用いる抗パーキンソン病薬は作用時間が長い方がオフ時間減少効果に有利であり、KW-6002の薬効持続時間がテオフィリンよりも長いことが知られていたということが、第 2事件原告らが主張するとおりであったとしても、選択的アデノシンA2A 受容体アンタゴニストであるKW-6002は、進行期パーキンソン病患者においてオフ時間の持続を減少させる作用を有するか否かについて、それを実際に確認してみなければ、当業者は予測することができなかったものというべきである。

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