名誉棄損
よく名誉棄損で訴えるという事件がありますが、この名誉棄損で訴える法的根拠の一つとして、不正競争防止法2条1項21号では、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」を不正競争と定義しています。
今回は、「虚偽の事実を摘示又は 流布することにより原告の名誉ないし営業上の信用を毀損するものであり、名誉毀損の不法行為(民法709条)及び信用毀損の不正競争(不競法2条1項21号)に当たる」旨主張しましたが、名誉棄損に当たらないと判決された事件を紹介します(令和 6年 (ネ) 10071号 損害賠償請求控訴事件)。
(要旨)原告は、公職選挙法違反という犯罪行為に関わる重大な嫌疑について厳重注意を受けたという発言は、東政連支部長としての立場にとどまらず、原告個人の社会的評価を低下させる旨主張する。
そこで検討するに、本件発言において、原告に明示的に言及する部分は 「本会の政連の会長、幹事長にA支部長、X政連支部長呼ばれて、厳重注意を受けておるはずです」というものであり、そのこと自体は、東政連目黒支部の公職選挙法違反の嫌疑に関し、原告が東政連支部長としての立場において、A東京会支部長と併せて厳重注意を受けたはずだという以上に、具体的な注意の内容や原告個人の具体的非違行為について述べるものではない。また、本件発言は、役員選任が議題となっていた本件総会の質疑の中で質問者の被告が行った発言であり、その全体をみると、過去に公職選挙法違反の嫌疑を直接かけられていた者(C)が支部長候補として推薦されるのは相当ではないという被告の意見を表明する点に主眼があることは明らかである。しかも、本件発言の直後、同じ本件総会の場でA東京会支部長から「公職選挙法違反の嫌疑をかけられた事実はない。東政連より、交通費の使い方等に関し、疑念を抱かれないようと注意を受けた。」との説明がされている(甲15)。これらの点を踏まえると、一般人の普通の読み方と注意を基準にした場合、本件発言により、原告個人の社会的評価が低下したとまでは認めることはできないというべきである。