品質等誤認惹起行為(不競法)
商品を販売する際、当該商品の優位性を主張することが多いと思います。不正競争防止法2条1項20号には、下記の品質等誤認惹起行為が不正競争に該当するとしています。今回は、品質等誤認惹起行為か否かが争われ、不正競争に該当しないとした非たばこ加熱式スティック事件を紹介します(令和4年(ワ)第16072号 不正競争防止法に基づく差止請求事件)。
不正競争防止法2条1項20号「商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の 原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし 、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為」
(要旨)不競法2条1項20号は、商品や役務に、その品質や内容を誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡等することにより、需要者の需要を不当に喚起するとともに競争上不当に優位に立とうとすることを防止する趣旨の規定であるといえるから、本件表示が本件商品の品質及び内容について誤認させるような表示に当たるか否かは、本件表示によって、本件商品についての需要者の需要を不当に喚起し、被告らが不当に競争上優位に立つことになるか否かによって判断すべきと解される。
原告商品を含む茶葉を原料とする複数の非たばこ加熱式スティックについて、定量下限を1ppm又は0.1ppmとする分析
においてニコチンが検出されていないとの結果が得られていたとしても、これらの商品は、いずれも茶葉を原料としているものである以上、当該定量下限を下回る量の内因性由来のニコチンが含まれている可能性を当然に否定することはできない。…①本件表示は、ニコチンの含有量を科学的な正確さをもって示す目的のものではなく、本件商品が含有する成分は茶葉と同様であって、本件商品に身体及び精神に悪影響を与えるような程度の量の成分を含有していないことを示す目的のものと考えられること、②本件商品が含有するニコチンは、茶葉そのものに含まれていた内因性由来のものであって、その含有量は、人が摂取しても安全と評価されており、生理活性がない可能性も指摘されている水準にとどまること、③茶葉を原料とする他の複数の非たばこ加熱式スティックに係る広告においても、定量下限を1ppmとした分析によりニコチンが検出されなかったことを根拠として「ニコチン0」との記載がされているところ、これらの商品にも当該定量下限を下回る量の内因性由来のニコチンが含まれている可能性を当然に否定することはできないことを指摘することができる。以上の点に照らせば、本件表示に接した需要者は、本件商品が、ニコチン含有の有無及びその量に関し、身体及び精神に与える影響との観点から、他の非たばこ加熱式スティックと比較してより優れたものであると認識するものではないというべきである。したがって、本件表示が、本件商品についての需要者の需要を不当に喚起し、被告らが不当に競争上優位に立つことになるものであるということはできず、よって、本件表示が本件商品の品質及び内容について誤認させるような表示に当たると認めることはできない。