商標の識別力
商標法第3条第1項第3号に基づいて識別力がないとして商標登録が拒絶査定、拒絶審決がなされ、審決取消訴訟でも識別力がないと判決された事件を紹介します(令和 6年 (行ケ) 10088号 審決取消請求事件)。
(要旨)本願商標「触らない施術」は、その構成文字の語義や、指定役務に係る取引の実情を踏まえると、(患部や身体に)触らないで行う施術程度の意味合いを容易に想起させるものであり、当該表示は、その指定役務との関係において、知識の教授やセミナー、書籍、ビデオなどの内容を表示記述するものとして、同種役務を提供する同業者における取引に際し必要適切な表示であり、その指定役務に係る取引者、需要者をして、当該役務に使用された場合、役務の質(内容)を表示したものと一般に認識されるも のである。
したがって、本願商標を、その指定役務である「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、電子出版物の提供、書籍の制作、教育・文化・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除 く。」について使用をしても、当該指定役務に係る需要者をして、患者や患部に触らないで行う施術との役務の内容を表したものと認識させるにとどまり、役務の出所を表示するものと認識させることはないというべきであるから、本願商標は、自他役務の識別標識として機能し得ないものである。そうすると、本願商標は、役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法3条1項3号に該当する。