商標類判断事例NO.22
「STARBOSS」を標準文字として第32類「ビール、清涼飲料、果実飲料、飲料用野菜ジュース、ビール製造用ホップエキス、乳清飲料」を指定商品とした本件商標は、引用商標と非類似であるとして有効審決され、審決取消訴訟では非類似と判断された事例を紹介します(令和7年(行ケ)第10036号 審決取消請求事件)。「STARBOSS」は造語であるとして、「STARBUCKS」とは異なると判断されました。
(要旨)ア 外観
(ア) 本件商標は、
「STARBOSS」の文字を標準文字で表してなるものであるのに対し、引用商標1~3は、「STARBUCKS」の文字をゴシック体や標準文字で表してなるものである。 両者は、語頭の「STARB」及び語尾の「S」の各文字において共通するものの、その間の「OS」、「UCK」の文字において異なっており、欧文字8文字又は9文字といった比較的短い構成にあっては、その差異は明確であるから、両者は、外観上、判然と区別し得るものである。
(イ) 原告は、本件商標の指定商品(飲料等)のように限られたスペースに多数の商品が必ずしも正面を向かずに陳列され、迅速に取引される商品では、8文字や9文字からなる構成の商標は、取引者、需要者に瞬時に認識されるものではないから、語頭の「STARB」の5文字が取引者、需要者に与える印象は極めて大きいと主張する。しかし、本件商標及び引用商標1~3ともに、欧文字が一連一体にまとまりよく構成されたものであって、「STARB」の部分が視覚上分離、独立して看取し得るとか、取引者、需要者に対して強く支配的な印象を与えるということはできないから、原告が主張する取引の実情を勘案しても、両者の外観は判然と区別し得るものである。原告の主張は採用することができない。
イ 称呼
(ア) 本件商標は、
「STARBOSS」の文字を表したものであって、その文字は一般的な辞書等に載録されていないから、一種の造語といえるものである。特定の意義を有しない欧文字からなる商標は、我が国で親しまれているローマ字読み又は英語風の読みにより称呼するのが自然であるから、本件商標からは、その文字から「スターボス」の称呼を生じる。引用商標1~3は、「STARBUCKS」の文字を表したものであって、その文字は一般的な辞書等に載録されていないから、一種の造語といえるものである。特定の意義を有しない欧文字からなる商標は、我が国で親しまれているローマ字読み又は英語風の読みにより称呼するのが自然であるから、引用商標1~3からは、その文字から「スターバックス」の称呼を生じる。両者は、語頭の「スター」と語尾の「ス」の各音において共通するが、その間の「ボ」、「バック」の音において異なり、比較的短い音数にあって音節数も異なっているから、両者の称呼は、全体の音感において異なっており、明瞭に聴別し得るものである。
(イ) 原告は、本件商標と引用商標1~3が、いずれも英語の複合語であって、前半の語にアクセントが置かれるため、後半の語は弱く発音され、語が文末に置かれる場合には更に弱く発音されるとか、カタカナ読みされる場合であっても「ボ」と「バ」の音は「b」の破裂音において共通しており、残りの音は明確に聴別できるものとはいえないと主張する。しかし、特定の意義を有しない欧文字からなる商標は、我が国で親しまれているローマ字読み又は英語風の読みにより称呼され、その場合には、一般に、日本語の音節に倣い、特定の音節にアクセントを置かず、平板な調子で称呼されることが多いといえるから、英単語としてのアクセントによって称呼されることを前提とした原告の主張は採用することができない。また、上記のとおり特定の音節にアクセントを置かず、平板な調子で称呼される場合には、「ボ」や「バック」の音も同様の調子で称呼されるから、これらの差異が明確に聴別できないとの原告の主張も採用することができない。
ウ 観念
(ア) 本件商標を構成する「STARBOSS」の文字は、一種の造語といえるものであって、特定の観念を生じない。引用商標1~3を構成する「STARBUCKS」の文字は、一種の造語といえるものであるが、前記1のとおり、引用商標1~3が、原告の業務に係る原告役務のみならず、原告の業務に係るコーヒー、茶、清涼飲料及び果実飲料等の飲料商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたと認められることから、引用商標1~3からは「コーヒーチェーンであるスターバックス」の観念が生じる。そうすると、両者から生じる観念は明確に区別することができる。
(イ) 原告は、取消事由2の主張において、本件商標からは「本件各引用商標(STARBUCKS)の関連商標」の観念が生じると主張する。そこで念のため検討すると、原告や原告子会社が、「STARBUCKS」以外の「STARB」から始まる語を本件各引用商標の関連商標として使用していたとか、そのような語が本件商標の指定商品の取引者、需要者において原告との関係を連想させるものとして認識されているなどの事情はうかがわれないから、本件商標から「本件各引用商標(STARBUCKS)の関連商標」の観念が生じるということはできない。原告の主張は採用することができない。
エ 以上のとおり、本件商標と引用商標1~3とは、その外観、称呼、観念においていずれも相違し、これらによって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

