商標類判断事例NO.25

図形商標で第21類「化粧用具等」を指定商品とした本件商標は、原告商品と類似であると判断された事例を紹介します(令和6年(ワ)第4369号 不正競争行為差止等請求事件)。図形商標が類似であるとの判断に加え、不競法2条1項1号「商品等表示」であっても侵害と判断されています。

(要旨)原告商品は、立体的形状又は立体的形状と平面標章との結合により構成される立体的な形態を有しているところ、このような形態との類否を判断するにあたっては、立体的な形態が、見る方向によって視覚に移る姿が異なる上に、実際に使用される場面では、一時的にその全体の形状を視認することができないものであることに鑑み、需要者がこれを観察する方向に主として視認するであろう一又は二以上の特定の方向(所定方向)を想定し、当該方向からこれを見たときにその視覚に映る姿の特徴によって商品又は役務の出所を識別することができるかで判断することが相当である。また、所定方向が複数存する場合は、いずれの所定方向から見たときの姿にも、それぞれ独立した出所識別機能が付与されているのであるから、およそ所定方向に該当し得ないような方向である場合は別段、そうでなければ、いずれか一方向の所定方向から見たときの姿が特定の平面的な形態と同一又は近似していれば外観類似の関係があるというべきである。そこで検討するに、原告商品は、原告商標を使用したものであり、基盤部裏面及び側面を片手で覆う形で把持し、基盤部の片側表面全体に配されている突起部を露出したまま、これを頭皮に当てる手動式頭皮マッサージブラシに係るものである。そうすると、需要者にとって最も目に着く視認方向は、突起部が配された基盤部の片側表面全体に対するものというべきであり、少なくともこの方向からの視覚は、需要者にとって特徴的なものであるといえるし、原告商品全体に占める割合、特に、基盤部裏面及び側面が、片手で覆われることが想定されるものであることを踏まえると、その全体像を最も特徴的に示すものというべきである。
原告商品と被告商品の形態に関する構成態様のうち、かかる部分に対応するのは、別紙7 形態比較表(不競法関係)」のa-2、c-2及びd-2であるところ、これらの点について、原告商品と被告商品が実質的に同一ないし類似していることについては当事者間に争いがない。そうすると、被告商品は当該所定方向からの外観において、原告商品と実質的に同一といい得るほどに類似しているものと認められる。一方、被告は、基盤側面部や基盤裏面部が所定方向であると主張し、側面の厚さや裏面の欧文字の相違を指摘する。しかし、仮にこれらも所定方向であると認めたとしても、なお、上記のとおり、突起部が配された基盤部の片側表面全体も所定方向といえる上に、当該部分こそが原告商品の全体像を示すものであることに鑑みれば、原告商品と被告商品が類似しているとの結論は左右されない。よって、被告商品は、原告商品の形態と実質的に同一であり、以下、争点4 及び争点5について判示するところとあわせると、需要者をして、原告の商品であると誤認させるものであると認められる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です