商標類否判断事例NO.11
ロゴ商標で、第35類「経営に関するコンサルティン グ並びにこれらに関する情報の提供、経営の診断又は経営に関する助言、事業の管理、市場調査又は分析」、第41類「セミナーの企画・運営又は開催」を指定役務とした本願商標が、拒絶査定を受けて不服審判で類似と審決され、審決取消訴訟でも類似と判断された事例を紹介します(令和 6年 (行ケ) 10083号 審決取消請求事件)。上図の本願商標と下図の引用商標は「バンソー」又は「バンソ」との称呼が生じるため類似であると判断されました。
また、本願抵触役務(経営コンサルティングや事業管理、市場調査・分析結果等を提供する役務)と引用抵触役務(商品の販売や商品市場に関する情報等を提供する役務)とは、各役務により提供される情報が商品・市場に関するデータの提供とこれに基づく助言のような形で密接に結びついているとして指定役務も類似であると判断されました。
(要旨)本願商標の文字部分と図形部分は、横方向の対比では、図形部分が文字部 分よりも横長であるが、縦方向の対比では、文字部分が図形部分の1.5倍 から3倍程度と顕著に大きい。そして、文字部分と図形部分は、重なることなく配置されている上、文字部分と図形部分が全体として何らかの意味を有 するものと認識され得るものでもないから、このような外観や、観念上の関 連性がないことに照らすと、本願商標は、必ずしも、商標全体の構成上の一体性の程度が高いということはできない。また、本願商標の図形部分は、前記のとおり上辺が凹面の横長略長方形であるが、何らかの意味のあるものが図形化されたと理解することは困難であ り、装飾的なものにとどまるから、図形部分自体からは、出所識別標識としての称呼及び観念が生じるものとはいえない。他方、本願商標の文字部分は、前記のとおりの外観において最も強く注目 される部分である。文字部分の「BANSO」は、辞書に載録されている語ではなく、本願商標の指定役務(第35類、第41類)との関連においても 何らかの意味を有する語と認めることはできないから、一種の造語として認識され、「バンソー」又は「バンソ」との称呼が生ずる。
引用商標の文字部分と図形部分は、横方向の対比では、文字部分が図形部 分よりも横長であるが、縦方向の対比では、図形部分が文字部分の約4.5 倍と顕著に大きい。そして、文字部分と図形部分は、重なることなく配置さ れている上、文字部分と図形部分が全体として何らかの意味を有するものと認識され得るものでもないから、このような外観や、観念上の関連性がない ことに照らすと、引用商標は、商標全体の構成上の一体性の程度は低いものといえる。また、引用商標の図形部分は、前記のとおり「B」の文字をモチーフとし てデザイン化したと思われるものであるが、何らかの意味を有するものとまで認識することはできず、図形部分自体からは、出所識別標識としての称呼及び観念が生じるものとはいえない。他方、引用商標の文字部分は、前記のとおりの外観であり、文字部分の 「BANSO」は、辞書に載録されている語ではなく、引用商標の指定役務 (第35類、第37類)との関連においても何らかの意味を有する語と認めることはできないから、一種の造語として認識され、「バンソー」又は「バンソ」との称呼が生ずる。
本願商標の要部であるその文字部分と、引用商標の要部であるその文字部 分とは、外観において、「BANSO」(いずれも「A」の文字の横棒を省略している。)の欧文字を共通にしており、書体及び色彩の差異はあるものの、外観上類似する。また、両者は、称呼において、いずれも「バンソー」 又は「バンソ」の称呼を生じ、称呼が同一である。そして、両者は、観念において、いずれも一種の造語として特定の観念を生じないから、比較することができないものである。そうすると、本願商標と引用商標は、外観において類似し、称呼において同一であるから、これらの外観及び称呼によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本願商標と引用商標は、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれのある類似の商標というべきで ある。

