商標類否判断事例NO.15

2段書き商標で、第44類「医業、医療情報の提供、健康診断、調剤、栄養の指導」を指定役務とした本願商標が、拒絶査定を受けて不服審判で引用商標と類似であると審決され、審決取消訴訟でも類似と判断された事例を紹介します(令和5年(行ケ)第10117号 審決取消請求事件)。2段書き商標でも要部だけで類否判断されて出所混同のおそれがあると認定されました。

(要旨)(1) 外観について
本願商標は「ベスリ会」及び「東京TMSクリニック」の各文字を明朝体風の同書体、同じ大きさ及び等間隔にて上下二段に書してなる結合商標であるのに対し、引用商標は「東京TMSクリニック」の文字を標準文字で書してなるものであって、本願商標と引用商標の外観は全体としては異なるものといえる。しかし、本願商標の要部は、「東京TMSクリニック」の各文字を明朝体風の同書体、同じ大きさ及び等間隔にて一連に書してなるものであって、「東京TMSクリニック」の文字を標準文字で書してなる引用商標と類似しているといえる。
(2) 称呼について
本願商標からは「ベスリカイトーキョーティーエムエスクリニック」の称呼のほか、要部の構成文字に相応して「トーキョーティーエムエスクリニック」の称呼も生じるのに対し、引用商標からは「トーキョーティーエムエスクリニック」の称呼を生じるのであるから、本願商標と引用商標から生じる称呼には同一のものが含まれているといえる。
(3) 観念について
本願商標からは「ベスリ会という医療法人が営む東京TMSクリニックという特定のクリニックの名称」との観念のほか、要部の構成文字に相応して「東京TMSクリニックという特定のクリニックの名称」との観念も生じるのに対し、引用商標からは「東京TMSクリニックという特定のクリニックの名称」との観念が生じるのであるから、本願商標と引用商標から生じる観念には同一のものが含まれているといえる。
(4) 小括
以上のとおり、本願商標と引用商標とは、全体の外観は異なるものの、本願商標の要部と引用商標は外観上類似している上、本願商標の要部から生じる称呼及び観念と引用商標から生じる称呼及び観念は同一である。しかるところ、これらによって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、既に認定した本願商標の指定役務に係る取引の実情も考慮して全体的に考察すると、本願商標と引用商標が同一又は類似の役務に使用された場合には、その役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ない。

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