営業秘密

不正競争防止法2条6項には、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものを「営業秘密」と定義しています。ですので営業秘密には、秘密管理性、有用性、非公知性が求められます。今回は、秘密管理性、非公知性が認められなかった裁判例を紹介します(令和 5年 (ワ) 12731号 損害賠償請求事件)。

(判決要旨)「秘密として管理されている」とは、当該情報に接した者が、これが秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として管理されていることをいうと解すべきである。また、「公然と知られていない」とは、当該情報が保有者の管理下以外では一般的に入手できない状態にあることをいうと解される。

被告の原告在籍当時における「現場調査依頼書」及び「シミュレーションシート」の管理状況を明らかにする証拠はない(原告自身、上記の管理状況を裏付けるものとした甲第9号証の写真につき、被告の原告在籍当時のものではない旨述べている。)。また、仮に、被告の原告在籍当時も甲第9号証の写真と同様の状況であって、上記の棚に注意書きの書面が掲示されていたとしても、上記の棚はいわゆる開放棚であり、書類が棚板の上にむき出しの状態で置かれていて、施錠管理等はされていない上、営業担当者のみならず、原告の従業員であれば誰でもアクセス可能であったことがうかがわれる(営業担当者のみがアクセスできる場所に設置されていたことを認めるに足りる証拠はない。)。加えて、原告が主張するような、棚に備え置かれた資料の数を管理する措置が講じられていたことも認めるに足りない。しかも、「現場調査依頼書」(甲2の1)には「(お客様控)」との記載があり、 「シミュレーションシート」(甲2の2)は、営業担当者の顧客に対する説明の際、トークだけでなく視覚的にも原告のサービスを分かりやすく認識させ、顧客を誘引することができるものであることからすると、これらの書面は、顧客(契約締結に至った者に限らない。)の手元に残ることが予定されたものであると認められる。また、これらの書面の内容について秘密にすることを顧客に求めているとは認められない。以上のことからすると、被告が原告に在籍していた当時、原告において、本件情報2及び本件情報3につき、当該情報に接した者が秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として管理していたと認めることはできない。

「現場調査依頼書」及び「シミュレーションシート」の内容はいずれも一般的なものである上、前記アのとおり、いずれも顧客(契約締結に至った者に限らない。)の手元に残ることが予定されたものであると認められることからすると、これらの書面が保有者の管理下以外では一般的に入手できない状態にあったと認めることはできない

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