均等第3要件
特許侵害訴訟事件において、文言侵害が成立しない場合に備えて、均等侵害を予備的に主張することが一般的です。今回は、均等5要件のうち第3要件(製造時容易想到性)が否定されて非侵害と判断された事例を紹介します(令和6年(ネ)第10069号 特許権侵害差止等請求控訴事件)。この事件では、トイレットロールの指掛け穴の形状を限定したクレームになっており、意識的除外(第5要件)にも該当すると認定されています。
(要旨)被控訴人製品1及び3のスリットは、中央部分のみが上方に対して弧状であり、両端部はそれぞれ外側に湾曲して下方に向かい、終端が内側に位置する形状であって、本件発明2の構成要件2Eに規定された「指掛け穴」の形状と異なるから、構成要件2Eの「指掛け穴」の形状を、被控訴人製品1及び3のスリットの形状に置き換えることに、当業者が対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであるとは認められず(原判決第3の7)、上記要件の③を充足しない。さらに、控訴人は、本件異議申立事件における決定の予告の通知後に、指掛け穴の形状を構成要件2Eの構成に限定しており、このことからすれ
ば、他の指掛け穴の形状を意識的に除外したものと認められ(原判決第3の7)、上記要件の⑤も充足しない。

