引用発明に周知技術を適用する動機付け

主引用発明に副引用発明を適用する場合だけでなく、引用発明に周知技術を適用する際にも、技術分野や課題、作用機能を考慮しなければなりません。今回は、引用発明と周知事項1を適用した際に生じる課題を解決するために、周知事項2を適用する動機付けがあると判断された事例を紹介します(令和5年(行ケ)第10013号 審決取消請求事件)。

(要旨)引用発明は、電動機用の磁極ハウジングの技術分野に属する発明であり、周知の事項1は、電動機に用いられる円筒状のカバー等又は円筒状のカバー等を用いた電動機の技術分野に属する技術である。他方、甲9並びに乙1及び2の記載内容(前記(1)から(3)まで)によると、周知の事項2も、電動機に用いられる管状のハウジング等又は管状のハウジング等を用いた電動機の技術分野に属する技術であると認められる。したがって、周知の事項1を適用した引用発明と周知の事項2とは、その属する技術分野を共通にするものといえる。
周知の事項1は、電動機のハウジングの端部に段付き部を形成することを前提とする技術であるから、周知の事項1を適用した引用発明においては、当然のことながら、当該段付き部の形成をどのような方法により行うかについて検討する必要が生じるところ、これは、周知の事項1を適用した引用発明が有する課題であるといえる。
周知の事項2は、管状部材の管端部に段付き部を形成するための具体的な方法(プレス装置の使用)を示す技術であるから、周知の事項2は、周知の事項1を適用した引用発明が当然に有する前記(イ)の課題を解決することのできる手段(技術)であるといえる。
以上によると、周知の事項1を適用した引用発明に周知の事項2を適用する動機付けがあったものと認めるのが相当である。

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