形態模倣1(不競法)

不正競争防止法第2条第1項第3号には、「他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為」(形態模倣)を不正競争として規定しています。そして、不正競争防止法第2条第5項には、「「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すこと」と定義されています。今回は、実質的に同一ではないとして形態模倣に該当しないと判断されたトートバッグの事例を紹介します(令和6年(ワ)第10842号 不正競争行為差止等請求事件)。意匠法は類似範囲まで権利範囲が及びますが、不正競争防止法では実質的に同一の形態である必要があります。

(要旨)原告商品1と被告商品1は、ハンドルの持ち手高(形態オ)に8センチメートルであるか10.5センチメートルであるかという違いがある上、バッグ前面の縦約3センチメートルの長方形タグの有無(同ク)、ハンドルと本体との取付部の約4センチメートル四方の縫い目の形状及び丸型補強鋲の有無(同ケ)においても相違する。この点、原告は、上記相違点は些細なものであると主張する。しかし、ハンドル本体との取付部の縫い目の形状、同部の補強鋲の有無や、バッグ前面の長方形タグの有無という相違点については、バッグ前面の形態が需要者の最も注目する部分であると解されること、上記縫い目の大きさ(約4センチ5 メートル四方)や長方形タグ(縦約3センチメートル)がバッグ全体の大きさに比して小さいものとはいえないことからすれば、先行する同種商品との比較のもと原告商品1固有の形態といえる部分が限られている中で、商品全体の形態に対する需要者の印象に影響する相違点があるといえる。また、ハンドルの持ち手高が数センチメートル相違する点については、需要者において、これのみで大きく印象を異にするとまでいえるかはともかくとして、上記のように原告商品1固有の形態といえる部分が限られている中で、相違点として軽視することはできない。…したがって、被告商品1は、原告商品1との形態上の共通部分や前記前提事実記載の事実経過からして、原告商品1を参考にしてデザインされたことはうかがわれるものの、原告商品1の「形態」を「模倣」したものであると認めることはできない

【原告商品1の形態】
ア バッグの前面及び後面の横幅が23センチメートルで開口部を含めると30センチメートル
イ バッグの高さ(縦の長さ)が19センチメートル20 ウ バッグの外側にはオープンポケットが1つ
エ バッグの前面及び後面に手持ちのためのハンドルが各1つ
オ 上記エのハンドル持ち手高が8センチメートル
カ 上記エのハンドルは生地を2枚合わせにしている。
キ バッグの内部は4つの仕切られた収納部が存在し,中央部にオープンポケットがある。また、中央部のオープンポケット前方に1つ、後方に2つの収納部が存在し、後方の2つの収納部幅は概ね1:2である。
ク バッグ前面のハンドルの延長部分に縦約3センチの縦長長方形のタグが存在する。
ケ バッグ前面上部とバッグ後面上部に各2ヶ所、上記エのハンドルと本体との取付部があり、同取付部に丸型の補強鋲が存在し、「□」及び「×」状の縫目がない。

【被告商品1の形態】
ア´ バッグの前面及び後面の横幅は23センチメートルである。
イ´ バッグの高さ(縦の長さ)が18.5センチメートル
ウ´ バッグの外側にはオープンポケットが1つ
エ´ バッグの前面及び後面に手持ちのためのハンドルが各1つ
オ´ 上記エ´のハンドル持ち手高が10.5センチメートル
カ´ 上記エ´のハンドルは生地を2枚合わせにしている。
キ´ バッグの内部は4つの仕切られた収納部が存在し、中央部にオープンポケットがある。また、中央部のオープンポケット前方に1つ、後方に2つの収納部が存在し、後方の2つの収納部幅は概ね1:2である。
ク´ バッグ前面にタグがない。
ケ´ バッグ前面上部,バッグ後面上部に各2ヶ所、上記エのハンドルと本体との取付部があり、同取付部に補強鋲が存在せず、約4センチメートル四方の「□」状の縫目,「×」状の縫目が存在する。

原告商品1
被告商品1

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