形態模倣2(不競法)
前回の続きとして、実質的に同一ではないとして形態模倣に該当しないと判断された財布の事例を紹介します(令和6年(ワ)第10842号 不正競争行為差止等請求事件)。今回は、不正競争防止法第2条第4項「「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。」のうち、素材による「光沢及び質感」が異なる点が採用されています。
(要旨)原告商品2と被告商品2は、外部面の凹凸や模様の有無において相違する。この点、原告は、上記相違点を認めつつも、原告商品2の外側の素材を被告商品2の外側の素材とすることは容易に着想できるものであるから、両形態は実質的に同一であるなどと主張する。しかし、原告商品2の外側の素材は「本革」であり、被告商品2の外側の素材は「合成皮革(PU)」であるから、素材による「光沢及び質感」(不競法2条4項)が異なることに加え、凹凸や模様が一切施されていない原告商品2とは異なり、被告商品2には凹凸のある網目様の模様が施されており、「商品の外部の形状」(同条項)においても相違している。そして、これら形態は、財布の需要者にとって強く関心を有する部分といえることからすれば、先行する同種商品との比較のもと原告商品2固有の形態といえる部分が限られている中で、上記相違点は、商品全体の形態に対する需要者の印象に影響するものといえる。…したがって、被告商品2は、原告商品2との形態上の共通部分や前記前提事実記載の事実経過からして、原告商品2を参考にしてデザインされたことはうかがわれるものの、原告商品2の「形態」を「模倣」したものであると認めることはできない。
A 長方形になっており、そのうちの一角が丸みを帯びている。
B 高さが9センチメートル、幅が11.5センチメートル、マチが2センチメートル
C 内部の中央部分に小銭を入れるためのポケットが付いている。
D 内部の両方の側面には、それぞれ2つずつの段違いでカード等を入れるためのポケットが付いている。
E 財布の開け閉めのためのチャックが L 字型になっている。
F 外部全体が凹凸のない面である
【被告商品2の形態】
A´ 長方形になっており、そのうちの一角が丸みを帯びている。
B´ 高さが9.5センチメートル、幅が11.3センチメートル、マチが2センチメートル
C´ 内部の中央部分に小銭を入れるためのポケットが付いている。
D´ 内部の両方の側面には、それぞれ2つずつの段違いでカード等を入れるためのポケットが付いている。
E´ 財布の開け閉めのためのチャックが L 字型になっている。
F´ 外部全体が斜めの網目模様となっている。





