意匠の利用

意匠法26条には、意匠の利用に関する長文規定があります。昔、弁理士口述試験でこの条文を何回も言い直しさせられた苦い記憶があります。意匠の利用関係が成立するには、他の構成要素を包含しているため全体としては非類似であるが、他の登録意匠の全部を実施していることが必要です。令和5年(ワ)第10125号 意匠権侵害差止等請求事件では、利用関係が認められませんでした。

意匠の利用(意匠法26条)とは、ある意匠がその構成要素中に他の登録意匠又はこれに類似する意匠の全部を、その特徴を破壊することなく、他の構成要素と区別し得る態様において包含し、この部分と他の構成要素との結合により全体としては他の登録意匠とは非類似の意匠をなすが、この意匠を実施すると必然的に他の登録意匠を実施する関係にある場合をいうと解するのが相当である。上記1によれば、本件意匠と被告意匠は、複数の構成において共通するが、容器本体の壁取付面の形状において顕著な相違があるところ、この相違点は、需要者が最も注意を惹かれやすい部分(要部) すなわち、 各意匠の特徴部分に関する相違点である。このように、意匠の特徴部分において両意匠は相違していることからすれば、被告意匠が、本件意匠又はこれに類似する意匠の全部を「その特徴を破壊することなく、他の構成要素と区別し得る態様において包含」するとはいえない
よって、被告意匠は、本件意匠又はこれと類似する意匠を「利用する」ものであると認めることはできない。

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