意匠の意見書の書き方
意匠では要旨変更補正が認められていませんので、意見書が非常に重要です。今回は、意願2022- 27631「収納容器」拒絶査定不服審判事件で登録審決となった意見書を紹介します。意見書では、共通点・相違点を列挙し、共通点については要部にならず、相違点が要部になるという主張立証をしています。
共通点が要部にならない点については、公開公報や実際に販売されている商品を列挙して、公知の形状である点を主張し、相違点が要部であることを下記のように主張することが有効です。
(意見書 要旨)「収納容器」の平面視は、収納容器の占める面積が大きくて目立つ部分であり、収納容器同士を積み重ねて使用する際に視認する部分でもありますので、看者は少しの差異でも十分に識別可能なところです。更に、「収納容器」の正面視は、引出しを使用する際に手を掛けて引出す部分なので、看者は少しの差異でも十分に識別可能なところです。収納容器の分野は、他の分野と異なって、市場では近似する形状を各メーカーが製造・販売をしておりますが、看者は他社との微細な差異を認識して購入することや過去に購入した商品形状を認識して再購入するなど、多くの似た商品があるがゆえに自然と微細な特長を識別できる分野になっています。
収納容器の平面視において、本願意匠は、段落ちした中央部に幅広微小凸部を左右の幅狭凹部の幅より広くすることで、凸凹の印象と凸凹していることで積み重ねてもズレない安心感の印象が生じるのに対して、引用意匠が、平坦であり、すっきりの印象とすっきりしていることで積み重ねてもズレてしまう不安感の印象が生じます。収納容器の正面視において、本願意匠は、微小凹部面(周縁部が環状突条部)を形成することで、凸凹した印象が生じるのに対して、引用意匠が、平坦であり、すっきりとした印象が生じます。また、本願意匠は、細長外周部を形成することで、引き出しが目立ち収納効率がよさそうな印象が生じるのに対して、引用意匠が、幅広外周部であり、外周部が目立ち収納効率が悪そうな印象が生じます。全体の視認において、本願意匠は、平面視や正面視に凹凸形状があるので、プラスチック製で製作した軽量で凸凹な印象が生じるのに対して、引用意匠が、平面視や正面視で平坦なので、木製で製作したローボードのような重厚(頑丈)で簡素な印象が生じます。
よって、両意匠は、明らかに別異の美感を想起感得させるものであり、その相違は、両意匠の類似判断に大きな影響を与えるものです。ゆえに、両意匠は、その具体的な態様・美観について相違点が共通点を凌ぐものですから、両意匠は類似しないと思料します。
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