指定商品・指定役務の類否判断
商標法4条1項11号は、先願の他人の登録商標と同一又は類似であって、指定商品若しくは指定役務が同一又は類似である商標は登録しない旨の規定です。この指定商品・役務の類否判断にあたって、指定商品や指定役務自体が誤認混同するか否かではなく、同一の営業主の製造又は販売に係るものと誤認される場合は、類似すると判断されます。
今回は、指定商品が類似するか否かが争われ、類似すると判断された事例を紹介します(令和7年(行ケ)第10005号 審決取消請求事件)。
(判例)指定商品が類似のものであるかどうかは、商品自体が取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にある場合には、たとえ、商品自体が互いに誤認混同を生ずるおそれがないものであっても、同号の「類似する商品について使用するもの」に該当すると解するのが相当20 である(最高裁判所昭和33年(オ)第1104号同36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁、最高裁判所昭和37年(オ)第955号同39年6月16日第三小法廷判決・民集18巻5号774頁)
(要旨)ア 本願指定商品と引用指定商品(水道管理用プログラム)について
(ア) まず、本願指定商品のうち、本願指定商品(分析機械機器用ソフトウェア)は、分析機械機器の組込みソフトウェアや、分析機械機器メーカーが自社製品専用に開発、提供するものに限られず、他社製品にも使用可能なソフトウェア単体で販売されるものも含む (前記⑵ア(ウ))。また、本願指定商品のうち、本願指定商品(データ分析用ソフトウェア)は、分析機械機器から得られたデータを含む様々なデータの分析及び可視化のための機能を有し、汎用のコンピュータによって作動するソフトウェアである(前記⑵ア(エ))。他方、引用指定商品(水道管理用プログラム)は、上下水道マッピングシステムに限らず、水質検査と密接に関連する水質の分析検査や、そのデータの収集、管理の機能を有するソフトウェア(以下「水質分析用ソフトウェア」という。)を含み得る(前記⑵ウ)。したがって、結局、本願指定商品と引用指定商品(水道管理用プログラム)には同一の商品(水質分析用ソフトウェア )が含まれ、当然のことながら、その場合の 需要者(水道事業者等)も共通にすることになる。
(イ) この点を措くとしても、本願指定商品(データ分析用ソフトウェア)と引用指定商品(水道管理用プログラム)は、いずれも汎用コンピュータ(電子計算機)で用いるソフトウェアであるという点において一致するところ、これらのソフトウェアは、対象となる業種や用途の専門性を問わずソフトウェアの事業者によって製造、販売、開発されて
いるものであり(前記⑷ウ)、両指定商品についても、同一営業主により製造、販売、開発され(前記⑷ア)、あるいは親子会社又は経営上密接な関係にあり、同一の商標を使用する同一の企業グループに属する会社により製造、販売、開発されている実情がある(前記⑷イ)。具体的な用途や需要者についてみても、両指定商品は、いずれも水質検査のデータを取り扱うという用途を含み、水道事業者、水質検査業者及び自家水道や給水設備の管理業者という需要者を共通にする。したがって、両指定商品に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にあることは明らかである。