明確性違反

特許法第36条第6項第2項には、「特許を受けようとする発明が明確であること」と規定されており、近年の拒絶理由として明確性違反が散見されます。今回は、「付着性粒子」との用語が不明確であるとため、非侵害と判断された事例を紹介します(令和6年(ワ)第70064号 特許権侵害差止等請求事件)。特にクレームの用語で作用効能的な記載をするとき、その作用機序や効果を当業者が理解できるよう、丁寧に記載する必要があります。

(要旨)本件明細書には、空気中に噴射された薬剤粒子が露出部に付着した後に再び揮散し、蚊類を駆除する従来技術が記載され(【0010】)、これによれば、薬剤粒子が露出部に付着した後に害虫防除成分が揮散して防除効果を発揮し得ることが本件優先日当時の技術常識であったことが認められる。そうすると、上記②の試験のように、放逐した蚊のKT値により防除効果を評価するに当たっては、露出部に付着した後に揮散した害虫防除成分の影響を考慮する必要がある。この点、上記①の試験は薬剤粒子の付着を直接示すものではない上、仮に、害虫防除成分の気中濃度と薬剤粒子の付着に何らかの関連があるとしても、2時間後の気中残存率と、露出部に付着した後に揮散した害虫防除成分の影響との関係や10時間後以降の防除効果との関係は不明であり、さらに、比較例の気中残存率が実施例の気中残存率の数値範囲に含まれていることの意味合いも不明である。そうすると、結局、上記①及び②の試験からは、10時間後以降のKT値(上記②の試験)が、露出部に付着した薬剤粒子が露出部に止まっている蚊を防除したことによるものか、露出部に付着した薬剤粒子に含まれる害虫防除成分が揮散して空中の蚊を防除したことによるものかが不明であって、上記①及び②の試験が、薬剤粒子が、時間が経過しても付着した状態を維持し、露出部に止まる蚊を防除したことを示すものであるということはできない。そうすると、上記の実施例が、「時間が経過しても付着した状態を維持し、露出部に止まる蚊を駆除・防除する粒子」の実施例であるとは認められず、上記の①及び②の試験は、「時間が経過しても付着した状態 を維持」といえるための付着の程度を示すものとはいえない。

原告は、争点2-3(サポート要件(本件発明))に関して、本件明細書の実施例の記載(前記イ(イ))について、噴射2時間後の気中残存率が2.9%以下であり、これは「付着性粒子」が壁面等に付着したことを示すものであり、「付着性粒子」が壁面等に付着することによって20時間も防除効果が持続することを確認したものであると主張する。しかしながら、実施例が、薬剤粒子が、時間が経過しても付着した状態を維持し、露出部に止まっている蚊を防除したことを示すものであるということができないのは前記イに説示したとおりである。以上によれば、本件明細書の記載や本件優先日の技術常識を基礎として、「少なくとも一部が処理空間内における蚊類が止まる露出部に付着する付着性粒子として噴射され」(構成要件1F)について、当業者が理解することはできないから、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるというべきである。

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