権利の濫用の抗弁
民法第1条第3項には「権利の濫用は、これを許さない」と規定されており、侵害訴訟事件において権利の濫用の抗弁を主張することがあります。今回は、権利の濫用の抗弁が認められた事例を紹介します(令和5年(ワ)第70505号 商標権侵害行為差止請求事件)。商標権者であっても、権利行使のために不当に取得した場合は権利の濫用にあたると判断されています。
(要旨)被告は、平成4年から令和7年に至るまで、被告商品について被告標章を含む「ゴミサー」の標章を使用し、直接又は販売代理店を通じて被告商品を販売していたものであり、原告も、令和元年5月までは、被告の販売代理店として製造元として被告の会社名を表示して被告商品の販売を継続し、さらに、令和3年8月30日まで、原告ウェブサイトでも「ゴミサー」という業務用生ごみ処理機の製造元として被告の会社名が表示されていた(認定事実ア、カ、サ及びス)。このように、本件出願の前後を通じ、被告による被告商品についての被告標章の使用態様は変わっておらず、原告が被告商品の販売を中止し、原告商品の販売を開始したからとって、被告が被告商品について被告標章を使用する正当な利益が失われるものではない。…以上のとおりの「ゴミサー」の文字から成る標章に化体した信用の帰属、本件出願から権利行使に至る経緯、被告における被告標章の利用状況など本件に現れた一切の事情に照らせば、原告の被告に対する原告商標権に基づく権利行使は、権利の濫用として許されないというべきである。

