泡の動的意匠

開蓋時における容器及び容器内の発泡性飲料の起泡の形状等まで、その変化の前後にわたる「容器入り飲料」の形状等について、意匠法第6条第4項に規定される動的意匠として意匠登録が認められなかった審決取消訴訟を紹介します(令和 6年 (行ケ) 10034号 審決取消請求事件)。発泡性飲料の開蓋時に出る泡について、動的意匠の要件である定形性や一定の規則性がないとして、残念ながら意匠登録されませんでした。

(判決要旨) 動的意匠は、出願に係る意匠が、意匠法2条1項の 「意匠」である状態を保ちながらその要素である形状等を変化させる場合に、その変化の過程であるその前後の状況を含めて全体として一つの動的な形状等として把握し、これを一つの意匠として保護しようとするものであり、変化の前後にわたる物品の形状である中間状態も含め、全体として一つの物品 の形状等として把握できる定形性等が必要である。具体的には、上記のとおり、物品の形状は、その変化の前後にわたる いずれの状態においても、意匠法上の物品としての要件、すなわち物品の属性として一定の期間、一定の形状があり、その形状認識の資料である境界を捉えることのできる定形性があり、その変化の態様に一定の規則性があるか変化する形状が定常的なものであることが必要である。
 これを本願についてみると、前記エのとおり、発泡状態の変化を示す開蓋後の平面図1ないし3において、缶周縁に帯状となった気泡の幅は一定ではなく、その輪郭形状もいびつな円形であり、その過程において、気泡による帯の幅が増した箇所がある一方で、消滅ないし減少した箇所がある。また、中央部の白い部分が消えて、白い気泡の小さな集合が不規則に散在する状態になった後、円環形状の径が漸次的に狭まっていくものの、輪郭形状の径が狭まる進行の度合いも場所により一定ではなく、形状も円ではなくいび つな形状を示した後に、2段の円錐台形状に至る。このような気泡の発生及び消滅の状況は、上記意匠ないし動的意匠の要件である一定の期間、一定の形状を有し、境界を捉えることのできる定形性があるものとみられないほか、変化の態様に一定の規則性があるか、あるいは変化の形状が定常的であるとも認め難いものである。


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