特許取消決定の取消請求

特許異議申立がなされて、維持決定の場合は不服申し立ての機会がなく、取消決定を受けた場合のみ、特許権者が取消決定を取消すために訴訟を提起することができます。今回は、特許取消決定の取消請求がなされましたが、進歩性がないとして棄却された事件を紹介します(令和 6年 (行ケ) 10053号 特許取消決定取消請求事件)。

数値限定発明において、数値範囲が記載されたそれぞれの構成が有機的つながりがなく、これらの組合せによる相乗効果がなく、臨界的意義に関する記載もないことから、引用文献に記載の数値範囲内であるとして進歩性が否定されました。

(要旨)「配向に係る構成」の効果は、本件発明の効果として示されておらず、「密度に係る構成」、「寸法・形状等に係る構成」及び「配向に係る構成」が、それぞれ単独で奏する効果を超えて、互いに関連して機能することを示す記載や相乗効果を奏することを示す記載はなく、そのように機能することが想定可能とみるべき作用機序等の記載も認められない。…これらの実験結果によれば、木質小薄片の長さ、木質ボードの密度又は木質小薄片の配向性を異ならせて比較した場合、これらの要素が強度、寸法安定性又は平滑性に影響を与えることが分かるものの、「密度に係る構成」、「寸法・形状等に係る構成」及び「配向に係る構成」が単独で奏する効果とその重なり合いを超えて、各構成が互いに関連して機能し、組合せによる相乗効果を奏することまでは認められない。

このような技術常識に照らせば、甲1発明において、木質薄片の寸法を木質板の用途に応じて調整、最適化し、その「繊維方向に沿った長さ」を甲1発明の寸法よりも小さくし、相違点1に係る本件発明1の構成である「10㎜以上35㎜以下」とすることは、当業者が有する通常の創作能力の発揮といえるから、当業者が容易に想到することができたものである。なお、本件明細書の記載をみても、「寸法に係る構成」の数値範囲が臨界的意義を有するとは認められない

【請求項1】繊維方向に沿った表裏面を有する細長形状の多数の木質小薄片が集合状態で積層されて接着一体化されてなる木質ボードであって、上記木質ボードの密度が500kg/㎥以上800kg/㎥以下であり、上記木質小薄片は、上記表裏面間の厚さが0.05㎜以上0.35㎜以下、上記繊維方向に沿った長さが10㎜以上35㎜以下、上記繊維方向と直交する方向に沿った幅が0.5㎜以上15㎜以下の細長形状に大きさと形状が均質に揃い、節部分がなく、且つ上記繊維方向がランダムに配向されていることを特徴とする木質ボード。

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