確認の訴え

「損害賠償請求権が存在しないことの確認の訴え」の確認判決を得るためには、確認の利益が必要となります。この確認の利益は、「当事者の有する権利又は法律上の地位の不安、危険を除去するために必要かつ適切である場合に限り認められる」とあり、原告らの権利又は法的地位への危険又は不安を除去するために必要かつ適切ではないとして却下された事件を紹介します(令和7年(ワ)第70003号 損害賠償請求権不存在確認請求事件)。この判決より、損害賠償請求権が存在しないからといって侵害の有無が確定されるものではないと既判力の範囲が拡張されないことがわかります。

確認の訴えにおける確認の利益は、即時確定の利益がある場合、すなわちにはもれなく、判決をもって法律関係の存否を確定することが、その法律関係に関する法律上 の紛争を解決し、現に当事者の有する権利又は法律上の地位の不安、危険を除去するために必要かつ適切である場合に限り認められる」(最高裁昭和27年(オ)第683号同30年12月26日第三小法廷判決・民集9巻14号2082頁、最高裁昭和44年(オ)第719号同47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻9号1513頁)

(要旨)原告らは、特許権侵害訴訟における判断構造や別件訴訟の内容に照らせば、本件においては、既判力を伴った裁判所の判断によって、本件製品についての被告と原告らとの間の紛争が一挙に解決されることになるなどとして、原告らには、本件特許権の侵害に基づく本件損害賠償請求権が存在しないことを確定させる利益がある旨主張する。しかしながら、本件各訴えは、本件損害賠償請求権の不存在の確認を求める訴えであって、たとえこれを認容する判決が確定したとしても、本件特許権の侵害の有無に係る理由中の判断が既判力をもって確定されるものではないから、被告が原告らに対し本件特許権に基づく差止請求権や別件訴訟に係る請求権を行使することは妨げられない。かえって、原告らは、被告による本件特許権の侵害に基づく本件製品についての差止請求権を争うためには、端的に当該差止請求権の不存在確認請求訴訟を提起することができるのであるから、本件損害賠償請求権が存在しない旨の確認判決を得ることが、原告らの権利又は法的地位への危険又は不安を除去するために必要かつ適切であ
るということはできない。

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