翻訳文提出期間

外国書特許出願において、優先日から2年6か月以内、又は国内移行した日から2か月以内に翻訳文を提出しなければなりません。ただし、正当な理由があった場合は、回復理由書の提出によって翻訳文を提出できますが、今回は、正当な理由が争点となった事例を紹介します(令和6年(行ウ)第5003号 手続却下処分取消等請求事件(第1事件)、令和6年(行ウ)第5004号 裁決取消等請求事件(第2事件))。翻訳文提出期間のように絶対的な期限のある手続きは、それぞれの国の休暇日を加味して対応しなければなりません。

(要旨)特許法184条の4第4項の「正当な理由」とは、第三者の監視負担に配慮しつつ実効的な救済を確保する観点から、特許法条約12条に規定する「Due Care(いわゆる相当な注意)を払っていた」と同旨をいうものとして規定されたものである。そうすると、同項の「正当な理由」があるときとは、国際特許出願を行う出願人(代理人を含む。以下同じ。)が、相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、客観的にみて国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったときをいうものと解するのが相当である(知的財産高等裁判所平成28年(行コ)第10002号平成29年3月7日判決参照)。これを本件についてみると、前記認定事実によれば、本件日本代理人事務所は、本件現地代理人事務所を含む取引関係者に対し、平成31年4月27日から令和元年5月6日まで10日連続で休業日となることを通知していたにもかかわらず、本件担当秘書は、その休業日中である平成31年4月29日に本件依頼メールを送信していたことが認められる。のみならず、前記認定事実によれば、本件担当秘書は、その送信の翌日から令和元年5月19日まで休暇を取得しており、本件現地代理人事務所は、本件日本代理人事務所からの返信がない中で本件依頼メールが到達したことを確認し得る唯一の日である同月7日においても、その確認すら怠っていたことが認められ、結局、本件依頼メールが送信されなかった事実が発覚したのは、本件担当秘書の休暇明けである令和元年5月20日であったことが認められる。そうすると、本件現地代理人事務所においては、本件日本代理人事務所からの返信がない中で本件依頼メールが到達したことを確認し得る唯一の日である令和元年5月7日においても、その確認すら怠っていたのであるから、本件現地代理人事務所は、国際特許出願の取下げを左右する本件依頼メールにつき、本件依頼メールを送信した段階において、そもそも、本件日本代理人事務所に対し、本件依頼メールが受領されたことを確認するための措置を全く講じていなかったことが認められる。これらの事情の下においては、本件現地代理人事務所が、相当な注意を尽くしていたにもかかわらず、客観的にみて国内書面提出期間内に明細書等翻訳文を提出することができなかったということはできない。したがって、本件期間徒過につき、特許法184条の4第4項の「正当な理由」があるものと認めることはできない。

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