虚偽告知

不正競争防止法2条1項21号の「虚偽の事実を告知」するものであれば、不法行為を構成します。特許権侵害訴訟が確定していないにもかかわらず、他社製品が特許権を侵害している旨を告知する行為などが該当します。今回は、特許権侵害訴訟が確定していないが、告知行為が不法行為ではないと認定された事件を紹介します。

(要旨)

本件各通知書の内容は、①第1審被告モビリティが別件訴訟を提起したこと、②第1審被告モビリティは、第1審原告に対し、第1審原告の製品が本件特許権を侵害していることを指摘し、第1審原告に対し、その事実を認め、正当な対価を支払うことを請求し、そのための誠意ある協議を求めて、数回にわたり内容証明書などで通知しているにもかかわらず、何らの回答がないまま現在に至っていること、③第1審原告は、マザーズ市場に上場予定の企業であり、上記のような紛争の事実は、第1審原告の上場の適格性に影響を及ぼすから、新規上場の承認については慎重に再審査されるべきであると思料すること、④別件訴訟の裁判所事件番号、訴訟係属裁判所、当事者名、訴訟金額、を通知するというものである。

①及び④は別件訴訟提起の事実そのものを伝えるものであり(上記引用に係る前提事実(5)エ)、③は慎重な再審査を要望していることを伝えるものであるにすぎず、何ら虚偽の事実を告知するものではない。上記②の内容も、第1審原告の製品が本件特許権を侵害しているという事実を断定的に言及するものではなく、その文脈に鑑みれば、これは訴訟前の紛争の経緯を伝えるものであり、そうした紛争があったこと自体は事実である(同前提事実(5)イ及びウ)。なお、上記②の内容のうち、何らの回答がないまま現在に至っているとする部分については、第1審原告は、本件特許権侵害の指摘に対して回答書を送付するなどして対応しているから(同前提事実(5)ウ)、厳密にいえば事実と異なるといえる。しかし、当該記載は上記②の一部にすぎず、その文脈に鑑みれば、これは、第1審原告において第1審被告モビリティが要求する正当な対価の支払を認める回答をしなかったことを誇張して表現したものと理解できなくもないから、この点のみをもって上記②を虚偽の事実を告知するものであると認めることはできない。

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