言語の著作物
言語の著作物の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為は、翻案権の侵害に該当し、既存の著作物の表現上の本質的特徴を直接感得することのできるものを作成する行為は、複製権の侵害に該当します。今回は、言語の著作物の複製権又は翻案権の侵害に当たるか否かは判断された事例を紹介します(令和5年(ワ)第70626号 損害賠償請求事件)。本件では、言語の著作物性が認められ、複製又は翻案権の侵害に当たると認定されました。
(要旨)言語の著作物について、翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいい(最高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁)、複製とは、既存の著作物に依拠し、これと同一のものを作成し、又は、具体的表現に修正、増減、変更等を加えても、新たに思想又は感情を創作的に表現することなく、その表現上の本質的な特徴を維持し、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうものと解される。
ア 本件新聞記事文章1-5
別紙記事対照一覧1によれば、本件新聞記事文章1-5は、数字の表記(漢数字、アラビア数字)を除いて、順序も含め対応原告文章の第1段落及び第3段落と、文章の具体的表現において同一である。原告の従業員である記者は、配信記事について、一般に、冒頭にニュースの重要部分を示した後に、詳しい内容や経過等を記載する構成(逆三角形構成)を採用し、配信記事に盛り込む事項を選択し、記者が現場で見聞した情景を記載し、取材相手の発言を主旨やニュアンスを変えないように要約及び整理し、文章を短く簡潔にするため、通常の散文に比して1文を短めにし、名詞の直後に丸括弧で情報を補い、読者が読みやすいリズムにするため、1文の終わりが同じ語の繰り返しとなるのを避け、数回に1回は体言止めにするなどの表現上の工夫をしているところ(甲18及び弁論の全趣旨)、上記の同一性ある部分は、東海道新幹線の線路への男性の立入りのニュースについて、第1文に立入りの日時、場所及び概要といった重要な情報を記載した後に、第2文及び第3文並びにその後の文において立入りによる影響を適宜要約し、及び整理して順に記載しており、同部分には、記事に盛り込む事項の選択、その配列、構成や具体的な文章表現に、作成者の思想又は感情が創作的に表現され、対応原告文章の表現上の本質的な特徴の同一性が維持されているといえる。そして、対応原告文章は3段落からなる文章であるのに対し、本件新聞記事文章1-5は1段落からなる文章であり、同文章では、対応原告文章のうち、第2段落(男性の行方及び新幹線の停止に至る経緯)が削除され、第1段落の後の改行がないものの、同一性ある部分に維持された表現上の本質的特徴及び対応原告文章における分量からすれば、同新聞記事文章に接する者が対応原告文章の表現上の本質的特徴を直接感得ることができるといえる。

