設計的事項
進歩性違反となる根拠として、当業者であれば適宜採用しうる設計的事項であると記載されている拒絶理由通知書が見受けられます。進歩性違反の根拠として、主引例から出発して、その主引例から設計的事項であるか否かを検討すべきであるところ、単に設計的事項として片付けることができない事件を紹介します(令和6年(ワ)第70128号 特許権侵害行為差止等請求事件)。
(要旨)被告は、①乙4発明にシート部材区切ダブル箱型船の構成に関する公知技術又は周知技術を組み合わせる動機付けがあり、②酸原液を噴出する孔をどこに設置するかは設計的事項である旨主張する。しかしながら、①について検討すると、乙4発明は、巻取用のロールと巻戻用のロールの合計2本のロールを1組だけ備えたシングル箱型船であることを前提とする構成であり(前記⑴【0013】、【図1】)、本件発明の出願当時に、当業者においてシングル箱型船をダブル箱型船に変更すべきことになるような課題があったものと認めるに足りる証拠はない。のみならず、本件発明の出願当時、ダブル箱型船が公知又は周知のものであったとしても、乙4公報の実施例から認定できる具体的な構成を備えたシングル箱型船につき、これをダブル箱型船の構成に変更する動機付けがあるとはいえず、更にこれに吊り棒とシート部材を酸処理槽の中央に設ける構成を付加する動機付けがあるとも認めるに足りない。②についても、乙4発明がそもそもシート部材を備えていない以上、シート部材との関係
で原液吐出部の設置位置を特定するという相違点に係る構成が、乙4発明における設計的事項であるということはできない。