指定商品との関係での周知性
商標法4条1項15号には、他人の業務に係る商品または役務と混同を生ずるおそれがある商標を登録しないことを定めています。誤認混同を生じるためには、他人の表示の周知著名性が必要とされますが、有効審決が出された審決取消訴訟事件を紹介します(令和7年(行ケ)第10044号 審決取消請求事件)。引用商標は指定商品(第21類「台所用品(「ガス湯沸かし器・加熱器・調理台・流し台」を除く。)、ガラス基礎製品(建築用のものを除く。)、おけ用ブラシ、ガラス製又は陶磁器製の包装用容器、プラスチック製の包装用瓶、清掃用具及び洗濯用具、アイロン台、貯金箱、お守り、おみくじ、花瓶、靴べら」)との関係で周知著名性がないから非類似と判断されました。やはり、早く商標登録をすることは重要です。
商標法4条1項15号の「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力基準として、総合的に判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)。
(要旨)本件商標と引用商標とは、その外観において酷似しているものの、前記1における検討を踏まえると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標の指定商品(第21類「台所用品・・・」)に関し、我が国の取引者及び需要者の間に広く知られているものとは認められない。そして、本件商標の指定商品と引用商標の使用商品(Tシャツ、トートバック、ジーンズなど)は、その需要者が一般需要者である点で共通するものの、性質、用途又は目的において類似しているとはいえず、その関連性はさほど高くない。そうすると、本件商標が上記指定商品に使用された場合、取引者及び需要者をして引用商標を連想又は想起させることは考えにくく、本件商標が、「他人」であるケンタウロスクラブないしケンタウロス社の業務に係る商品であると誤認させ、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるとはいえない。これに対し、原告は、引用商標がケンタウロスクラブのアイデンティテイを示すシンボルマークであり、購入者にとってはそのようなシンボルマークが付されている商品を所有することに最大の意義があり、それがどのような種類の商品に付されているかは大きな問題にはならないなどとして、誤認、
出所混同が生じ得るおそれがあると主張するが、独自の見解に基づくものであり、採用することができない。



