識別力が否定された事例NO4
拒絶査定不服審判で商標法第3条第1項第3号の識別力がないとして拒絶審決が出された事例3件を紹介します。指定商品の一部で品質表示として自他商品識別機能を有さないと判断し、指定商品の他の一部で品質誤認であるとした論理構成が参考になります。
(1)「パーソナル睡眠カウンセラー」の文字を標準文字として第44類「睡眠に関するカウンセリング」を指定役務とした事例
本願商標は、構成全体として「個別の相談に応じて睡眠に関する指導・助言を行うカウンセラー」程の意味合いを認識させ、これをその指定役務「睡眠に関するカウンセリング」に使用しても、これに接する需要者は、そのようなカウンセラーによって提供される役務であること、すなわち、単に役務の質(提供者、内容)を表示するものと認識、理解するにとどまる。したがって、本願商標は、役務の質(提供者、内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)「泉州極鮮度しらす」の文字を標準文字として第29類「しらす(生きているものを除く。),しらすの加工水産物」を指定商品とした事例
本願商標は、その構成全体からは「大阪府の泉州地域のきわめて鮮度の良いしらす」ほどの意味合いを容易に看取し得るものであるから、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「大阪府の泉州地域で漁獲されたきわめて鮮度の良いしらす」「大阪府の泉州地域で漁獲されたきわめて鮮度の良いしらすで製造されたしらすの加工物」という商品の品質を表示したものと理解、認識するにとどまり、本願商標は自他商品を識別する標識としては機能し得ないものというのが相当である。したがって、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示してなる標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(3)「EdTech ONLINE EXPO」の文字を標準文字として第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,電子出版物の提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,コーチング(訓練),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),オンラインによるゲームの提供,放送番組の制作,教育又は娯楽に関する競技会の企画・運営,図書及び記録の供覧,セミナーの企画・運営又は開催,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),図書の貸与,オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないものに限る。),娯楽施設の提供,書籍の制作,放送番組の制作における演出」を指定役務とした事例
上記本願商標の構成及び取引の実情を考慮すると、「EdTech ONLINE EXPO」の文字からなる本願商標は、これに接する取引者、需要者に、「オンラインシステムを活用した教育サービスに関するオンラインで開催される展覧会・博覧会等」や「エドテック(edtech)をテーマ(内容)とする又はエドテック(edtech)に関係する商品・サービス等を展示の対象とするオンラインで開催される展覧会・博覧会等」程度の意味合いを認識、理解させるものであるから、これをその指定役務中、例えば「展覧会・博覧会に関する知識の教授」や「展覧会・博覧会における技芸・スポーツ又は知識の教授やセミナーの企画・運営又は開催」等の「展覧会・博覧会等に関する役務」に使用しても、これに接する取引者、需要者に、その役務が、「オンラインシステムを活用した教育サービスに関するオンラインで開催される展覧会・博覧会等に関する役務」や「エドテック(edtech)をテーマ(内容)とする又はエドテック(edtech)に関係する商品・サービス等を展示の対象とするオンラインで開催される展覧会・博覧会等に関する役務」であること、すなわち役務の質(内容)を表示したものと一般に認識させるにとどまるというべきである。したがって、本願商標は、これをその指定役務中、「展覧会・博覧会等に関する役務」に使用するときは、役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、「展覧会・博覧会等に関する役務」以外の役務に使用するときは、役務の質について誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。