識別力が否定された事例NO.15
拒絶査定不服審判で商標法第3条第1項第3号の識別力がないとして拒絶審決が出された審決取消請求事件を紹介します(令和6年(行ケ)第10103号 審決取消請求事件)。結合商標として判断した結果、産地及び品質を同じくするような商品の取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものというべきであるから、特定人によるその独占使用を認めることは公益上適当としないとして、識別力が否定されました。
・「シングルモルト金沢」の文字を標準文字で表してなる商標について、第33類「洋酒」に属する指定商品
(要旨)本願の指定商品である「ウィスキー」の一つの品質(種別)である「シングルモルト」は、前記のとおり「ウィスキーで、一つの蒸留所で製造したモルトウィスキーのみを瓶詰めしたもの」であることから、「産地や蒸留方法
等によって個性やこだわりが出やすく」「蒸留所の場所、製造方法、熟成期間などによって風味や香りが大きく変わる」ものとされる(乙7)。そのため、「ウィスキー」の品質(種別)である「シングルモルト」の商品の取引においては、その個性と関連する「産地や蒸留所の所在地」を併せて表示することの蓋然性が高いものといえる。…そうすると、本願の指定商品である「ウィスキー」との関係において、本願商標を構成する「シングルモルト」と「金沢」の各文字部分は、「ウィスキー」の品質(種別)である「シングルモルト」と、その産地となる蒸留所又は貯蔵庫(以下「蒸留所等」という。)の所在地を表す「金沢」を結合したものといえる。そして、「シングルモルト金沢」の文字を標準文字で表してなる本願商標を、指定商品「ウィスキー」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「金沢に所在する蒸留所等で生産されたシングルモルトウィスキー」との商品の産地及び品質(種別)を表示したものと理解するにとどまるといえる。