識別力が否定された事例NO.20
拒絶査定不服審判で商標法第3条第1項第3号の識別力がないとして拒絶審決が出された審決取消請求事件を紹介します(令和5年(行ケ)第10083号 審決取消請求事件)。指定商品を第9類「電気スイッチ」とする商品の形状についての下記商標の識別力が否定されました。
(要旨)本願商標は、白色の長方形を縦長に描き、その内側の中央に、辺の長さが外側長方形部分の約半分程度の、影様の黒色の線で縁取りされた白色の縦長の長方形を配し、内側長方形部分の右側長辺に影様の薄い灰色の直線を配し、その左に上端から下端までの長さよりやや短く、縦に緑色の直線を描いてなるものである。そして、本願商標同様の形状を有する原告製造に係る「電気スイッチ」に係るカタログ(甲3の1)には、「シンプルで、明瞭な要素で構成されること。ミニマルで、偏りのない美しさを持つこと。ひとつの空間を超えて、建築が持つ思想へと向かう存在になること。」との記載があり、JIS大角連用形スイッチとの取付互換性の確保も強調されている。一方、メーカー、施工会社、ユーザ等のウェブサイト(乙1~8、10~13)によれば、本願商標の指定商品である「電気スイッチ」を取り扱う業界において、外側の縦長の略長方形の内側に、表示灯を施した縦長の長方形の押しスイッチを配した構成の電気スイッチは、広く使用されていること、表示灯の形状、位置、点灯した際の色彩は様々なものが採用されていることが認められる。そして、これらの電気スイッチの形状は、「もっと美しく、使いやすく。/これからのくらしのスタンダード」(乙2)、「インテリアと響きあう/住まいに必要なものだから“美しさ”にこだわりたい。みんなが使うものだから“使いやすさ”を求めたい。」(乙6)といった謳い文句からも理解されるとおり、商品の機能や美観を発揮させるために選択されているものと解される。上記のような実情に鑑みると、本願商標の形状は、指定商品である「電気スイッチ」の用途、機能、美観から予測できないようなものということはできず、需要者は、本願商標から、「電気スイッチ」において採用し得る機能又は美感の範囲内のものであると感得し、「電気スイッチ」の形状そのものを認識するにすぎないというべきである。
