識別力が否定された事例NO17

拒絶査定不服審判で商標法第3条第1項第3号の識別力がないとして無効絶審決が出された審決取消請求事件を紹介します(令和5年(行ケ)第10119号 審決取消請求事件)。指定商品「時計」について使用された場合、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみから成る商標として、識別力が否定されました。

(要旨)本願商標のラグには、腕時計において金属ベルトを繋ぐ位置に上下二つの凹部がある。ラグの中央には、外側が八角形で内側が円形のベゼルがあり、そのベゼルのそれぞれの角に六角形のマイナスネジが配置されており、全体の色は銀色である。文字盤内のインデックスは、数字ではなく、格子模様から隆起して見える目盛りからなり、各定時においては1本線であり、上部中央においては2本線である。文字盤にはリューズ近くの位置に腕時計において通常日付けが表示されている位置に空白があり、中央上部にブランド名を示す部分があるほかは、文字盤の全面にわたり立体的に見えるように陰影を施した格子模様が示されている。
 本願商標の指定商品は「時計」であるから、腕時計のほか、置時計や掛け時計等も含まれるものであり、その需要者は一般の消費者であると認められる。本願商標は、腕時計からベルト、針を除いたものであるとの形状に係る上記アの各事情は、需要者がこれを容易に認識することができるといえる。
 腕時計においては、別掲2の1(1)ないし(4)、2(1)ないし(29)及び乙4のとおり、腕時計のバンド及び針(時針等)を除いた部分の形状として、ラグ、ケース、風防、インデックスのある文字盤、リューズ及びベゼル等から構成され、八角形のベゼルやビス、文字盤の格子模様などを、それぞれ備えるものが相当数存することが認められる。上記の事情を総合すれば、本願商標の形状は、客観的に見て、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されたものであり、かつ、本願商標の需要者である一般の消費者において、同種の商品等について、機能又は美感に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであると認められる。そうすると、本願商標に係る形状は、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみから成る商標として、商標法3条1項3号に該当するというべきである。

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