識別力が否定された事例NO2

拒絶査定不服審判で商標法第3条第1項第3号の識別力がないとして拒絶審決が出された事例4件を紹介します。単なる品質表示として自他商品識別機能を有さないと判断した論理構成が参考になります。

(1)「ふわふあ新触感」の文字を標準文字として第24類及び第25類「ガーゼ生地」等を指定商品とした事例

商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきところ(最高裁昭和53年(行ツ)第129号同54年4月10日第三小法廷判決参照)、本願商標については、別掲2のとおりの各構成文字の語義、及び別掲3ないし別掲5のとおりの、補正後指定商品の分野における取引の実情に照らせば、「ふわふわ新触感」を含む、「ふわふわ」「○○新触感」の文字が、商品の触り心地、肌触り等、商品の触感を表す語として多数使用されている事実が認められるから、本願商標は、「ふわふわとした新しい触感を有する商品」であるという商品の特性(品質)を表示記述するものとして、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものといえ、また、このような商標は、商品の取引者、需要者によって一般に使用される標章であって、商標としての機能を果たし得ないものというべきであるから、同号に該当するものというのが相当である。

(2)「菜食マンドゥ」の文字を標準文字として第30類「マンドゥ(韓国の餃子)」等を指定商品とした事例

本願商標をその指定商品に使用する場合、これより「原材料に肉類を使用していない(菜食主義者用の)マンドゥ(韓国の餃子)」ほどの意味合いが容易に認識し得るものといえ、これに接する取引者、需要者において、その商品が「原材料に肉類を使用していないマンドゥ」又はそれに関するものであること、すなわち、商品の品質を表示したものと理解されるにとどまるといえることから、本願商標は、その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。

(3)「バレルエイジドティー」の文字を標準文字とし第30類「バーボン樽で熟成した茶」等を指定商品とした事例

本願商標が商標法3条1項3号に該当するというためには、本件審決日当時において、本願商標がその指定商品との関係で商品の内容(品質)を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標の取引者、需要者によって本願商標がその指定商品に使用された場合に、将来を含め、商品の内容(品質)を表示したものと一般に認識されるものであれば足り、それが一般に用いられていた実情があったことまでを必要とするものではないというべきである(知財高裁平成27年(行ケ)第10107号 同年9月28日判決言渡)「バレルエイジドティー」の文字を標準文字により表してなるところ、その構成中、「バレルエイジド」の文字は「たる熟成の、たる(の中)で熟成させた」を意味する英語「barrel-aged」(英辞郎ontheWEB:https://eow.alc.co.jp/search?q=barrel-aged)の表音を片仮名表記したものと看取し得るものであり、「ティー」の文字は「(乾燥・加工した)茶の葉」(「ランダムハウス英和辞典第2版」株式会社小学館)、「紅茶。(一般に飲料用の)お茶。(紅)茶の葉。」(「プログレッシブ英和中辞典 第5版」株式会社小学館)を意味する英語「tea」の表音を片仮名表記したものと看取し得るものであるから、その構成全体からは「樽で熟成させた紅茶、お茶、茶の葉」の意味合いを看取し得るものといえる。

(4)「オーソモレキュラーダイエット」の文字を標準文字として第41類及び第44類「ダイエット及び栄養摂取計画の実行に関する助言又は相談」等を指定役務とした事例

本願商標は、構成文字全体として「オーソモレキュラー(個人の体質に合わせて栄養素を取り入れる栄養療法)を取り入れたダイエット」程度の意味合いを容易に認識させるものである。
してみれば、本願商標をその指定役務中、例えば「ダイエット及び栄養摂取計画の実行に関する助言又は相談,ダイエットに関する指導・助言・情報の提供」等に使用しても、これに接する需要者は、「オーソモレキュラー(個人の体質に合わせて栄養素を取り入れる栄養療法)を取り入れたダイエット」程の意味合いの、ダイエットの手法を表したものと認識するにとどまり、単に役務の質(内容、手法)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。

(5)「血糖コーチング」の文字を標準文字とし第9類「アプリケーションソフトウェア(コンピュータプログラム)」等、第35類、第36類及び第41類ないし第45類を指定商品とした事例

本願商標が商標法商標法3条1項3号に該当するというためには、審決の時点において、本願商標が、その指定商品又は指定役務との関係で、「その商品の産地、販売地、品質、形状その他の特性」又は「その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性」を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者によって本願商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合に、将来を含め、商品又は役務の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(知財高裁平成27年(行ケ)第10107号 同年10月21日判決、知財高裁平成27年(行ケ)第10061号 同年9月16日判決等参照)本願商標は、その構成文字全体として「血糖について指導・助言をすること」ほどの意味合いを容易に認識させるにとどまるというべきである。
よって、本願商標は、これをその指定商品及び指定役務中、「アプリケーションソフトウェア(コンピュータプログラム)」等の第9類の商品に使用するときには、これに接する取引者、需要者をして、「血糖について指導・助言するためのアプリケーションソフトウェア(コンピュータプログラム)」であること、すなわち、商品の品質、特徴等を簡潔に表示したものと理解、認識するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を有するものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を有さない文字からなる商標といわざるを得ない。

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