識別力が否定された事例NO6
拒絶査定不服審判で商標法第3条第1項第3号の識別力がないとして拒絶審決が出された事例3件を紹介します。最近、識別力が否定されて拒絶される商標登録出願が増えているような気がします。
(1)「SPORTY & RICH」の文字を標準文字として第18類「トートバッグ」及び第25類「ハット(帽子),キャップ(帽子),フード付きのプルオーバー型セーター及びプルオーバー型シャツ,クルーネックセーター,ティーシャツ,長袖シャツ,スウェットパンツ,ショートパンツ及びショーツ」を指定商品とした事例
本願商標は、その構成文字の語義から理解できる意味合いや上記取引の実情を踏まえると、「スポーティー(軽快で活動的なさま)で、リッチ(豪華な)な」程度の意味合いを認識させるにすぎず、これをその指定商品に使用するときは、取引者、需要者に、単に商品の品質を表示するものと認識、理解されるというべきである。
(2)「杵もち揚」の文字を標準文字として第30類「揚げたせんべい,揚げたもち菓子,揚げた菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)」を指定商品とした事例
本願の指定商品を取り扱う分野においては別掲のとおり、「杵もち」(きね餅)又は「杵餅揚」(杵もち揚)と称する米菓(おかき、かきもちなど)が製造、販売されている実情があり、また、もち米を油で揚げた菓子などを「○○もち揚(げ)」などと称している実情がある。そうすると、本願商標に接する取引者、需要者は、「油で揚げたおかき又はかきもち」という米菓の一種を表したものと認識、理解するもので、その指定商品との関係において、本願商標は、単に商品の品質(種別)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標にすぎない。
(3)「マスク肌不調」の文字を標準文字として第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つけまつ毛用接着剤,口中清涼剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,入れ歯洗浄剤,歯磨き,化粧品,香料,薫料,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つけづめ,つけまつ毛」及び第5類「薬剤,医療用試験紙,医療用油紙,医療用接着テープ,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,おりものシート,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,綿棒,歯科用材料,おむつ,おむつカバー,はえ取り紙,防虫紙,乳幼児用粉乳,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品,栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。),人工受精用精液」を指定商品とした事例
本願商標の指定商品と関連する取引業界においては、別掲1のとおり、例えば「マスク肌荒れ」、「マスク荒れ」、「マスクニキビ」、「マスク蒸れ」などのように、マスク着用による肌の不調(症例、症状)を「マスク○○」と称している実情がある。また、当該取引業界において、別掲2のとおり、「肌不調」の語を「肌の調子が悪いこと」程の意味合いで使用している実情もある。そうすると、本願商標は、その構成文字の語義及び取引の実情を踏まえると、構成文字全体として「マスク(着用)による肌の不調」程度の意味合いを想起させるもので、その指定商品中「化粧品」及び「薬剤,衛生マスク」などに使用するときは、それに接する需要者及び取引者をして、単に商品の品質又は用途を表示するものと認識、理解させるにすぎない。