識別力が否定された事例NO7
拒絶査定不服審判で商標法第3条第1項第3号の識別力がないとして拒絶審決が出された事例3件を紹介します。不服審判請求をしても識別力有りと判断されない事例が続出しています。
(1)「CHIANTI」の文字を標準文字として第33類「wines.」を指定商品とした事例
「CHIANTI」の文字よりなる本願商標を、その指定商品に使用をしても、これに接する取引者、需要者は、本願商標が商品の産地を表示したものか、そうでないとしても、「イタリア,トスカーナ地方産の幸口で香りの高い赤ワイン.」(上記1(2)ア(ア))と評されるように、「イタリア・トスカーナ地方産の赤ワイン」であることに対し付されるワインのカテゴリーやグレードの類、すなわち商品の品質を表示したものと認識するにとどまるというのが相当である。してみれば、本願商標は、商品の産地、品質を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として請求人以外の者もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものである。
キアンティ(キャンティ)地方においては、請求人とは異なる事業者によるワイン「キャンティ・クラシッコ(Chianti classico)」等も生産されており、「CHIANTI」が当該ワインの産地名としても紹介された上で取引されている実情があることからすれば、「CHIANTI」の文字が、請求人のみによる使用により、請求人のみの業務に係る商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されるに至ったと認めることはできない。
(2)「IoT薬箱」の文字を標準文字として第9類・第42類「携帯電話機等」を指定商品・指定役務とした事例
願商標の構成中の「IoT」の欧文字は、「(internet of things)自動車・電化製品など、IT機器以外の「もの」が、インターネットにより相互に接続されているシステム。物のインターネット。」を、「薬箱」の漢字は、「薬を入れておく箱。」(いずれも「広辞苑 第七版」発行者:株式会社岩波書店)を意味する語であるところ、別掲2のとおり、「IoT」の欧文字は、「IoT」を活用した商品について、その対象となる商品等の文字の前に「IoT」の文字を冠して、当該IoT技術を活用した商品(例えば、インターネット通信機能を備えた商品等)であることを表す際に、一般に使用されている事実が認められる。・・・これに接する需要者・取引者は、当該商品及び役務が、「IoTを活用した薬箱に利用する商品及び役務」であることを理解するにとどまるから、本願商標は、商品の品質及び用途並びに役務の質(内容)及び用途を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものである。
(3)「骨格診断7タイプ」の文字を標準文字として第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),娯楽施設の提供」を指定役務とした事例
本願商標「骨格診断7タイプ」は、商標の構成やその指定役務に係る取引の実情を踏まえると、スタイリング方法などの診断方法の一種である、(骨格の特徴から)「7タイプに分類する骨格診断」程度の意味合いを想起させるから、その指定役務との関係で役務の質(内容)を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、その指定役務に係る取引者、需要者をして、当該役務に使用された場合、役務の質(内容)を表示したものと一般に認識されるといえる。