進歩性

今回は、当業者が容易に想到できない進歩性が争点となった判決を紹介します(令和 6年 (ネ) 10041号 特許権侵害に基づく損害賠償請求控訴事件)。主引例との相違点が、「携帯電話」か「カード」かの違いであるが、その相違点は周知技術であるとして進歩性が否定されました。主引例と周知技術を示す引例とを組み合わせる動機付けがある点は、技術分野の共通性から判断されています。

(要旨)

(相違点)本件訂正発明では、「携帯電話」との間で個別情報を要求・受信し、処理を行うのに対し、乙33発明では、「カード」との間で行う点。

銀行業務、輸送、加入者、医療、IDなどに関する多くの情報を転送する媒体であるスマートカード(ICカードに相当)の機能を内蔵するセルラ電話(携帯電話)と、ATMトランザクションを実行するためのRFカード・リーダーや販売トランザクションを実行するためのPOSシステム等の外部リーダーとの間で、RFインターフェースを用いてスマートカードからのデータ、すなわち「個別情報」を通信する技術は、発明の名称を「セルラ電話で用いるための非接触型スマートカード」とする発明の特許出願に係る公開特許公報である乙24文献(公開日は平成10年4月14日)に記載された公知の発明である。また、個別情報の通信を、ICカードに代えて携帯電話との無線通信で行う技術は、本件優先日(平成13年4月17日)当時において、当業者の周知技術であった(乙7、12~15)。そして、乙33発明と乙24発明及び上記周知技術は、いずれも個別情報の通信技術である点で共通するから、乙33発明において乙24発明又は上記周知技術を適用する動機付けがあるといえる。そうすると、乙33発明に乙24発明又は周知技術を適用し、個別情報の通信を「カード」に代えて「携帯電話」との間で行うものとすること、すなわち上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。

(本願発明)【請求項1】 RFIDインターフェースを有する携帯電話であって、当該携帯電話のスイッチを押すことで生成されるトリガ信号又はリーダライタから送信されるトリガ信号を、当該携帯電話の所有者が第三者による閲覧や使用を制限し、保護することを希望する被保護情報に対するアクセス要求として受け付ける受付手段と、前記トリガ信号に応答して、RFIDインターフェースを有するRバッジに対してRバッジを一意に識別できる識別情報を要求する要求信号を送信する送信手段と、前記Rバッジより識別情報を受け取って、該受け取った識別情報と当該携帯電話に予め記録してある識別情報との比較を行う比較手段と、前記比較手段による比較結果に応じて前記受付手段で受け付けた前記アクセス要求を許可または禁止するアクセス制御手段とを備え、前記アクセス制御手段は、当該比較手段で前記アクセス要求を許可するという比較結果が得られた場合は、前記アクセス要求が許可されてから所定時間が経過するまでは前記被保護情報へのアクセスを許可することを特徴とする携帯電話。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です