進歩性の考察

本日は進歩性に関する無効審判事件について紹介します。原出願と同一にならないような数値限定(除くクレーム)を行った分割出願について、主引例+周知技術で進歩性違反の無効審決がなされました。分割出願をする際、原出願と全く同一の特許請求の範囲にしてはならないところ、例えば、他の用途や他の構成で限定できるような実施形態の充実が必要となります。出願当時からあらゆる侵害態様を想定して実施形態を記載することが難しいところですが、ここは弁理士の腕の見せ所だと思われます。

(主な要点)

<相違点a>
本件発明は、界面活性剤について「(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)」と特定しているのに対し、甲1発明ではこのような特定はない点。

本件発明は、角栓除去用液状クレンジング剤に含まれる界面活性剤について「(但し、界面活性剤が全量に対して0~10体積%であるものを除く。)」と特定しているが、これは、特許権の設定登録に至る前の、拒絶査定不服審判(不服2017-012650)における平成29年11月2日付けで特許法第39条第2項に基づく拒絶理由が通知され、分割出願である本件特許の出願の原出願の特許第6120423号における特許請求の範囲に記載された請求項1に係る以下の発明と、同一の発明とならないことを目的として特定したものである。本件特許明細書には、界面活性剤が全量に対して0~10体積%の実施例しかないことから、界面活性剤を全量に対して0~10体積%であるものを除いた量で配合することにより、格別顕著な効果が奏されるものとは認められない。

水を含む液状クレンジング剤における界面活性剤の割合として、体積%ではなく質量%の単位ではあるが10質量%を超える例が多々あることが理解できるから、このような技術常識からみて、界面活性剤の配合量を「全量に対して0~10体積%ではない」量とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。本件発明の効果は、皮膚等に付着したタンパク質を抽出洗浄するというものであり(本件特許明細書【0064】、【0071】)、具体的には、角栓のある皮膚に対する市販の石けんよりも高い洗浄効果を示すというものであるところ(本件特許明細書【0141】、【0149】)、本件特許明細書には、界面活性剤が全量に対して0~10体積%の実施例しかないことから、界面活性剤を全量に対して0~10体積%であるものを除いた量で配合することにより、格別顕著な効果が奏されるものとは認められない。そして、甲1には「角栓やメラニンを含む古い角質や酸化した汚れもすっきり。」との記載のとおり、角栓の除去についての記載もあるから当業者が当然に想起し得たものである。

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