類否判断を考えてみましょうNO.15
前回まで意匠の審査基準を簡単に紹介しましたので、今回は審査基準に沿った当て嵌め事例を紹介します。左(上)の「舌ブラシ」(本件意匠)と、右(下)の「歯ブラシ」(引用意匠)とは似ていると思いますか?答えは似ていない(非類似)と審決されました。
(当て嵌め)
(1)本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「舌ブラシ」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「歯ブラシ」であり、清掃対象が舌であるか歯であるかについて異なるが、いずれも口腔内の清掃に使用し、対象物の表面に付着した汚れを刷掃し除去する用途及び機能が共通しており、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は類似する。
2 類否判断
(2)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価
ア 共通点の評価
両意匠は、首部と首部先端の植毛台があり、植毛台は略隅丸三角形の板状であり、植毛領域には多数の略円柱状の毛束を備えてブラシ面とし、その正面視上下中央付近を上下端に比べて若干高いものとした点は、口腔内を清掃するブラシの物品分野において、概括的な構成の共通点に過ぎず、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
イ 相違点の評価
相違点(ア)について、本願意匠は、正面視右端が切りっぱなし状であり、右側面に取り付け孔がある形状等であるのに対して、引用意匠は本願意匠に相当する部分の右側は把持部と連続しており、当該部分の右側面がなく、この点は両意匠の骨格的な態様に係る相違であって、正面視右端の連続する把持部の有無は需要者の注意を強くひくものであるから、相違点(ア)が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(イ)について、両意匠は、首部の底面視右端寄りの態様が相違し、引用意匠は、首部の具体的な軸形状が不明であるが、この点は首部及び首部端部のプロポーションに影響し、需要者に異なる美感を起こさせる点であることから、相違点(イ)が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(ウ)及び相違点(エ)について、両意匠は、植毛台の厚みに対する毛束の高さ比率並びにブラシ面の態様及び植毛台の正面視形状並びに植毛領域の毛束の配列態様が相違するが、この点はブラシの使用時の操作感や清掃性能に大きく影響する形状等であって需要者が商品の選択・購入時に子細に観察する点であることから、相違点(ウ)が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
ウ 形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点は、両意匠の類否判断に与える影響は限定的であるのに対し、相違点(ア)から相違点(エ)は、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。

