類否判断を考えてみましょうNO.24

ディスペンサーボトルの「マグネット」について、登録意匠(部分意匠)と被告意匠は似ていると思いますか?答えは似ていない(非類似)と判決されました(令和7年(ネ)第800号 意匠権侵害差止等請求控訴事件)。縦長長方形のマグネットだけでなく、上下端の横長棒状の防滑シートも需要者は注意を惹く部分であり、登録意匠と被告意匠は非類似と判断されました。

(要旨)本件意匠に係る商品の使用態様は壁面に取り付けた状態で使用することもできるというものであり、そのため本件意匠に係る商品の需要者は壁面取付け時に壁面取付けのために機能するマグネットを含めた容器の背面(壁取付面)の具体的な形状に最も注意を惹かれるものと認められることからすると、その使用態様が本件意匠に係る商品と同様である被告商品においても、需要者は、壁面取付け時に壁面取付けのために機能する部材であるところの背面部の縦長長方形のマグネットとその上端及び下端に設けられた横長棒状の防滑シートで画された部分に最も注意を惹かれるものと認められる。そして、マグネットと防滑シートは、部材が違うけれども、いずれも黒っぽい色であって周囲が突出した枠で囲まれているため、需要者は通常上記両部材を一体のものとして観察するのが自然と解されるから、被告意匠の背面部における本件意匠の背面部(右側面図)において意匠登録を受けようとする部分に相当する部分は、縦長長方形のマグネットとその上端及び下端に設けられた横長棒状の防滑シートで画された部分(原判決別紙乙4意匠(図面)の背面図において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分参照)とするのが相当である。そうすると、本件意匠と被告意匠を対比する際に防滑シートは本件意匠の権利範囲外に設けられたもので比較する必要がなく、類比判断に影響しないとする一審原告の上記主張は、本件意匠との対比に必要な被告意匠の構成の一部を恣意的に除外しようとするものであって採用できないというべきである。

一審原告は、被告意匠の一部の構成からなる「イ号包含意匠」は、本件意匠に類似し、かつ、別の形状である防滑シートと結合しつつ被告意匠に包含されているから、被告意匠は本件意匠を利用する関係にあると主張する。しかしながら、一審原告主張に係る「イ号包含意匠」なるものは、本件意匠の要部である背面部と対比されるべき被告意匠の背面部の部分を、上記(1)で説示した被告意匠の背面部の縦長長方形のマグネットとその上端及び下端に設けられた横長棒状の防滑シートで画された部分とせず、被告意匠の背面部の縦長長方形のマグネットの部分のみとした上で、本件意匠の利用関係をいうものであって、前提において失当である。そして、被告意匠における本件意匠の背面部において意匠登録を受けようとする部分に相当する部分が上記(1)説示のとおりであることを前提とすると、被告意匠が本件意匠又はこれに類似する意匠の特徴をそのまま残して包含しているといえないことが明らかであるから、被告意匠と本件意匠との間に利用関係が成り立つ余地はない。被告意匠が本件意匠を利用している旨をいう一審原告の主張は採用できない。

登録意匠
被告意匠

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