類否判断を考えてみましょうNO.8

下記の左の瓦(本件意匠)と、右の瓦(引用意匠)は似ていると思いますか?答えは似ている(類似)と審決されました。需要者には施工業者・販売業者も含まれますが、背面形状は瓦の看者の注意を引かないと判断されています。

相違点1(背面形状)、同2(女瓦の左端部の壁)、同6(男瓦の縮径段差部の溝の有無及び右側端の角度)、同7((i)女瓦の上端寄りの凸部の形状、(ii)左下端の角度)は、瓦を葺いた施工後の状態からは看取できない構成態様に関するものである。
意匠の類否は「需要者の視覚を通じて起こさせる美観」に基づいて判断されるべきものである。両意匠にみられる瓦は、屋根等を葺くための建築部材であって、瓦屋根の建築物を注文し、その所有者等となる施主が中心的な需要者であり、そうした需要者の求める美観は施工後の外観に係るものである。瓦屋根を施工する建築業者、瓦の販売業者等も需要者ではあるものの、そうした立場の需要者であっても、最終的には施主の満足を得させる施工後の外観が最も重視される。そうすると、両意匠における瓦については、施工後の状態から看取できない構成態様が意匠の類否判断に及ぼす影響は相対的に小さいものにとどまるというべきである。よって、瓦を葺いた施工後の状態からは看取できない相違点1、2、6、7が、類否判断に及ぼす影響は相対的に小さいものにとどまるというべきである。

総合評価に基づく形状等の類否判断
以上のとおり、両意匠の要部は、本葺一体瓦において看者の注意を強く引く男瓦の連なりに係る構成部分であり、かつ、従来の意匠に見られなかった新規の創作に係る下方開口のコの字模様というべきである。その共通性が両意匠の形状等の類否判断に及ぼす影響は極めて大きく、他方、両者の相違点の中には、類否判断に一定程度の影響を及ぼす点はあるものの、その影響は相対的に小さいものと認めざるを得ず、全体として評価すれば、両意匠の形状等は類似する。

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