類否判断を考えてみましょうNO.9

下記の左のやすり(本件意匠)と、右のやすり(引用意匠)は似ていると思いますか?答えは似ていない(非類似)と審決されました。やすりのような実用的な物品に関して、「やすり面」や「やすり目」といった機能に関する部分は、類否判断に与える影響が大きくなります。

相違点 

(ア)やすり面の範囲
本願意匠は、正面視略中央から左端まで、全長の約1/2の範囲の「表裏面」及び「こば」に、やすり面を設けているのに対し、引用意匠は、正面視左寄りから左端まで、全長の約1/4の範囲の「表裏面」及び「こば」に、やすり面を設けている点において相違する。

(イ)やすり目の形状
本願意匠は斜め格子状の複目であるのに対し、引用意匠は略うろこ状(青海波模様)である点において相違する。

(ウ)ひも通し穴の有無
本願意匠は、ひも通し穴が無いのに対し、引用意匠は、正面視右端付近(後端部付近)の屈曲部の真ん中にやや大きめの略円穴を設けている点において相違する。
(エ)色彩の有無
本願意匠は、線図による形状のみの意匠であるのに対し、引用意匠は、やすり本体は銀色、グリップは赤色に着色している点において相違する。

相違点の評価
相違点(ア)について、両意匠のやすり面の範囲は、大きく異なるものであり、当該相違点は、やすりをかける際の使い勝手に大きな影響を及ぼすものであって、需要者もこの点に注目するといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(イ)について、両意匠のやすり目は、具体的な形状が異なるものであり、当該相違点は、やすりをかける際の使い勝手に大きな影響を及ぼすものであって、需要者もこの点に注目するといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(ウ)について、引用意匠の紐通し穴は、やや大きいものであるが、この種物品の分野おいて、工具の後端部付近に紐通し穴を設けたものは、本願出願前よりごく普通に見られるものであるから(例えば、意匠登録第1409515号の意匠)、格別需要者の注意を引かないものであり、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
相違点(エ)について、引用意匠の色彩は、この種物品の分野おいて、比較的多く見られるものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

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